【社会医療法人財団董仙会 本部情報部長 山野辺裕二】
今回からはITイノベーションが進むべき方向について考えたいと思います。思い描いているキーワードは、引き算、シンプル、スピード、外圧、豪腕といったところですが、まずは「引き算」を考えてみます。
■社会の縮小と上下の歪み
都会にいる人には実感が乏しいと思いますが、私の職場がある石川県能登地方では、2015年の国勢調査で人口が前回(10年)から10%減少した自治体もあります。少子高齢化と人口減少で日本の社会は基本的に縮小を続けています。何もせず、立ち止まってはいられないところまで来ています。
最近、国内の名だたる企業で不祥事が相次ぎました。神戸製鋼の製品品質の偽装、日産やスバルでの無資格者による完成検査、商工中金の不正融資といった問題です。このような不祥事が相次ぐ意味を考えてみると、もう建前だけでは現場が回らず、政府や経営者の要求と末端の現実の間にある歪みに折り合いを付けるには、文字通り不正に手を染めるしかない所まで追い込まれているのかもしれません。
私たちが働く医療・介護・福祉分野も、既にその付近まで追い込まれているように思いますが、周辺環境はまだ、拡大や複雑化が続いています。
■レセプトに住所情報を追加すべきという議論
7月12日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、診療報酬情報を活用する上での課題の一つに「レセプトに患者の住所情報等がないため、住所情報を基にしたデータ分析ができない」ことが挙げられました。その後9月27日の中医協では、レセプトに患者住所の郵便番号などを追加することが提案されています。図1はその際の資料ですが、全国の施設からさまざまなデータが集められているのが分かります。
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次回配信は12月22日5:00の予定です
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