【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授 京極真】
Q 最近採用したスタッフの問題行動に困っています。例えば、ケアレスミスが多い、周囲が見えなくなる、物事を順序立てて進めることができない、などです。本人は真面目なので、最初は「仕事に慣れれば改善するかな?」と期待していたのですが、その兆しがありません。すると、私もイライラしてしまい、駄目だと分かってきても、キツく叱責してしまいます。しかし、問題は一向に改善しませんので、強い無力感に襲われます。どうしたらよいのでしょうか?
自身の感情を調整し、問題が生じる構造を人間・業務内容・環境の観点から整理しましょう。その上で、目標達成を妨げている業務内容と環境を変えるようにしてください。
■感情に価値判断を与えない
こうした場合はまず、相談者の精神衛生を改善する必要があります。強いストレスが掛かった状態は視野を狭め、問題への対処を難しくします1)。まず、自身のストレスを低減させて対応力を高めましょう。
できることはいろいろあります。
一つは、「ネガティブな情動に価値判断を与えないようにする」というものです。例えば、ケアレスミスばかりするスタッフにいら立ったら、「今腹が立っているな」などと自身の感情をそのまま観察します。
医療の仕事は、人の命を預かるため、多くの場面で失敗が許されません。それ故、スタッフに問題行動を改善してもらいたいという気持ちが強くなり、ついカッとなって叱責してしまうものです。ネガティブな情動が強くなるときには、感情それ自体を否定しても肯定してもダメなのです。というのも、ネガティブな情動は、否定すればさらにストレスが溜まりますし、肯定すると怒りに拍車が掛かります。ネガティブな情動に価値判断を与えると尾を引きます。
しかし、「今腹が立っているな」などと、“感じるままに感じる”ようにすると、強い感情はそれほど持続しません。なので、イライラしたときは、感情の是非を問わず、少しでも心を健やかな状態に回復させるようにしましょう。ストレスが軽減すればそれだけ、思考の可動域が広がります。その結果として、次に述べる具体的対策を実行しやすくなると思います。
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次回配信は12月8日5:00の予定です
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