公立病院の事務職は、病院の事務を一生の仕事にしたいと思うプロパー職員だけでいい-。岡山市立市民病院の豊岡宏事務局長はこう言い切る。民間企業から病院の世界に入り、公立病院の経営再建を進めてきた“病院経営のプロ”は、公立病院の再建を担う次世代の事務長の育成に力を注いでいる。【大戸豊】
■病院経営にやりがい、市民病院の再建請け負う
豊岡氏は製鉄大手で労務管理や経営管理に携わっていたが、2000年に傘下の企業立病院(400床)に出向し、初めて経営再建に関わった。経営が軌道に乗り、黒字化するまでには4年を要したが、それまでの業務では得られなかった充実感や達成感があり、自分の天職と感じたという。
その後会社から病院外への異動を命じられたことを契機に、もっと病院経営に携わりたいと「病院の経営再建を請け負うプロの事務局長」として脱サラ。大阪の1000床規模の民間病院の経営再建を進めた後、12年には和歌山県の橋本市から、橋本市民病院(300床)の事務局長のオファーを受けた。
市民病院は04年の新築移転に伴う巨額の設備投資(建物100億円、医療機器40億円)のため、05年度には年間40億円の売り上げに対し、13億円の赤字を計上して倒産寸前となった。その後赤字幅は縮小したものの、14年に経営改革がスタートするまでの間、毎年、数億円規模の赤字を出し続けた。また、院長も当直するなど、医師不足は深刻で、看護師も集まらなかった。
豊岡氏の赴任には、民間人材の登用を快く思わない市議会から反発の声が上がるなど、公立病院の関係者が抱く“官尊民卑”の意識を強く感じた。
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