【特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志】
■「効率化できないのは仕方がない」は本当か
「うちの病院の職員の働き方は効率的だよ」と胸を張って言える医療機関はどれだけあるでしょうか。医療はそもそも、工業製品やシステム製品のように、均一的な生産ができるものではありませんし、誰にでも同様のサービスを提供するものでもありません。さまざまな傷病を抱えた救急患者が昼夜を問わず搬送されるなど、コントロールが利かない場面が多数あります。さらに、公的な医療制度により、医療サービスの提供方法も細かなルールがあり、自由度は低い。このような特性をある種の言い訳にしつつ、「業務が効率化できないのは仕方がない」といったあきらめが医療界に深く浸透しているのではないでしょうか。しかし、視点を変えると、こうした制約条件の下でも、効率化できることは山のようにあるはずです。
視点を変えると言いましたが、「他の業界ではどうしているか」を考えるのも有効です。クラウドを活用し、どこからでもイントラネット(病院なら電子カルテ)にアクセスできたり、遠方や海外とのミーティングはWebカンファレンスで行い、会議資料やマニュアル類はペーパーレス化したりしている。このようなことは他の業界ではある種の常識となっています(業界や会社の規模にもよります)。
病院では、会計や経理、給与計算といった業務は正職員が担当し、収益に直結する医事業務をアウトソーシングする傾向にあります。しかし他産業では真逆で、営業など収益を稼ぐ部隊は正職員が担い、どこの会社でも業務内容が似ている会計や経理、給与計算などはアウトソーシングする傾向にあります。問題は病院のアウトソーシングが進まないことではなく、会計や経理などの業務でIT化が進まず、業務が標準化されていないことです。“手作業”が多かったり、属人的な処理があまりにも多かったりしている。また、外部委託している医事業務も効率的とは言い難いのが、医療界の現状でしょう。
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次回配信は10月5日5:00の予定です
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