【社会医療法人財団董仙会 本部情報部長 山野辺裕二】
前回は、ビッグデータやAI時代の到来に、電子カルテの中身は対応できるかを考えました。今回は電子カルテの「器」の部分に焦点を当てたいと思います。
■コミュニケーション機能がどうにも弱い医療システム
最近、医師間の連携が悪かったため、がんの発見が遅れたという報道がありました。CTなどの放射線検査を読影した医師が、読影レポートにがんの疑いありと記載していましたが、主治医がそれを見落としたまま1年が過ぎ、進行した状態でがんが発見されました。
何億円もする最新の手術ロボットを導入しているような病院でさえも、電子カルテシステムをはじめとした医療情報システムの情報伝達や連携機能はまったくお粗末という状況が続いているのです。
私が今の職場の電子カルテを使って感心したのは、患者にひも付いたメールシステムでした。主治医が院内他科に電子カルテを通じて診察を依頼した場合、診察した医師が返書を記載すると、返事が登録されたことをメールで主治医に知らせます。そのメールから患者のカルテも開けます。それでも読影レポートや病理検査結果報告などはメールと連動していないので、診療情報管理担当者がチェックし、主治医に連絡したり、レポートを渡したりして、確認漏れを防いでいます。
私が初めて電子メールを使ったのは、今から30年前です。当時はパソコン通信サービスの黎明期で、インターネットは普及していませんでした。その後20世紀の終わりには、簡易メール機能を備えた病院情報システムが登場したものの、ちまたの電子メール機能には遠く及ばぬ代物でした。ここ数年でようやく一部電子カルテ製品に実用に足るメール機能が付くようになったところです。
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次回は9月22日5:00配信予定です
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