【社会医療法人財団董仙会 本部情報部長 山野辺裕二】
先ごろ閉会した国会で「次世代医療基盤法」※が成立しました。名前だけを見ると、「わが国の医療の将来的根幹を定めた重要な法律なのか?」と思ってしまいますが、正式名は「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」です。この法律は5月30日に改正施行された個人情報保護法とも関係が深いものです。今回はその両者の関係を掘り下げます。
※公布日の5月12日から1年以内に施行
■改正個人情報保護法で追加された概念
個人情報保護法の正式名は「個人情報の保護に関する法律」です。ただし、第1条には「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」とあります。つまり、保護だけでなく「活用」にも重きを置いた法律です。
個人情報保護法の主な改正点は以下の通りですが、今回の話題に関係が深いのは(4)と(5)です。
表1 個人情報保護法の主な改正点
(1)5000人要件の撤廃
(2)責任組織の一元化(個人情報保護委員会)
(3)個人情報の定義の変更(個人識別符号の追加)
(4)「要配慮個人情報」概念の追加
(5)「匿名加工情報」概念の追加
(4)の「要配慮個人情報」は、人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪歴などを指し、医療情報も当然含まれます。これらはあらかじめ本人の同意を得て取得することを原則義務化しており、今回の改正でより保護を厳しくした内容になっています。ここだけを見ると、医療現場に激変をもたらしそうですが、現実は違います。例えば「医療機関を受診した時点で(取得に)同意しているとみなす」とされているからです。詳細は、個人情報保護委員会と厚生労働省による「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に記載されています。
「匿名加工情報」とは、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報のことで、個人情報の取り扱いよりも(内容の公表を前提とするなど)緩やかな規律の下で、自由な流通・利活用を促進することを目的として定められた概念です。
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次回は7月21日5:00配信予定です
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