テレビ電話などのICT(情報通信技術)を使って医師が患者の死亡を確認し、死亡診断書を交付するための手順などを検討した厚生労働科学研究(研究代表者=大澤資樹・東海大医学部教授)の結果が20日までに公表された。医師が対面で死後診察しようとすると半日以上かかるようなケースを想定し、看護師が呼吸音を確認するなどして、必要な情報を医師に伝えるといった具体案を示している。同省では、この結果を踏まえ、死亡診断書を遠隔で交付できる体制を年度内に整備する方針だ。【佐藤貴彦】
医師が死亡診断書などを交付しないと、埋葬や火葬の許可が下りない。そのため、医師不足の地域などでは遺体を保存して医師の死後診察を待つケースや、自宅での看取りを諦めるケースがあるとの指摘があった。これを受けて政府が昨年6月、そうした患者が最期まで住み慣れた場所で過ごしやすくなるように、ルールの見直しを決めていた=表=。
医師の業務などを規定する医師法は、自ら診察せずに診断書を交付することを禁止しているが、一定の情報が得られる場合は、テレビ電話などを使った遠隔診断が今も認められている。しかし、どのような手順なら必要な情報を得られるのかが明確でなく、死亡診断書の遠隔での交付は実質的に難しい。
今回のガイドライン案は、医師がICTを使って死亡診断書を交付するための手順などの在り方を、昨年度の厚労科学研究でまとめたもの。策定に向け、日本医師会の今村聡副会長や日本看護協会(日看協)の齋藤訓子副会長、日本法医学会の池田典昭理事長ら関係者が議論を重ねた。
■延命望む患者らは対象外
それによると、遠隔での死亡診断が可能なのは、自宅などで療養中の患者の死亡前14日以内に医師が対面で診療し、がんなどによる死亡が予測されることを患者・家族らに説明していたケースで、対面で診療した医師が遠隔での診断も担当する。
患者ががんでも、進行する前で死因になると考えられない場合などは遠隔診断の対象にならない。また、患者・家族が積極的な延命措置を希望する場合も対象外で、事前に同意書を作成しておくよう求めている。
さらに、患者が亡くなったとき、医師が駆け付けられれば対面で死亡を診断するが、直接診断するまでに12時間以上かかると見込まれる場合は遠隔診断を行う。例えば、患者宅に向かうための旅客船が週に数便しかないなど、交通手段を用意できない場合だけでなく、医師が病院での日当直勤務に入った直後で、それが終わるまでに時間がかかる場合なども当てはまる。
(残り1181字 / 全2218字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】