【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授 京極真】
Q. 「言った」「言わない」でもめることがあります。 |
今回の対応の基本ポイントは、
1)ゲームに乗らないと決める
2)過去よりも未来に焦点化する -です。
■水掛け論への対応は難しい
「言った」「言わない」の水掛け論は、なかなか厄介な問題です。記録に残していない限り、事実を確かめるすべがなく、どこまで行っても結論が出ないからです。また、そうであるが故に、実際に言っていようがいまいが、いくらでも信念対立化するという特徴があります。その理路はこうです。
例えば、実際に「言った」人が「言った」と主張する場合、「自分は正しく、相手は間違っている」という構図になりますから、自身の正当性を示すために相手を徹底的に責めがちです。他方、実際には「言っていない」人の場合、言っていないことがばれるとまずいので、かたくなに「言った」と主張し始めます。
このように、事実を確かめられない水掛け論は、「言った」「言わない」が本当はどうであれ、信念対立が発生する構造を備えているのです。こうなってしまうと、どう対応したらよいかは難しい問題です。
では、この問題に対して信念対立解明アプローチを試みてみましょう。
■ポイント1:ゲームに乗らない
水掛け論によって生じる信念対立の特徴は、「言った」「言わない」で争うという点に求められます。対応の最初のポイントは、ここから導けます。
つまり、水掛け論が予見される、あるいは既に発生していたら、直ちに「言った」「言わない」の争いをやめるのです。確かめようのない事実をめぐって必要以上に言い争わない。だって、結論は出ないんですから。
そうはいっても、相手がいつまでもそこにこだわって、水掛け論から抜けられない可能性があります。そうしたときは、「あなたはそう受け取ったんですね」「あなたはそう感じたのですね」などと、相手の認識を否定も肯定もせずに受け流しましょう。
水掛け論は、言ったか否かをめぐって争う“ゲーム”なので、関係者の誰かがゲームを降りれば、争いはいずれ消失するしかありません。明らかに相手がうそをついていたら腹が立つと思いますが、そこはいったんぐっとこらえましょう。
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次回配信は5月12日5:00を予定しています
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