産業医科大の松田晋哉教授はこのほど、東京都内で講演し、「地域医療構想」による2025年に向けた医療提供体制の整備で最も重要なのは「慢性期」のニーズへの対応だと指摘した。また、地域の医療のニーズなどを示すデータを分析・活用する力を各病院が身に付け、自院の将来像を客観的に描くべきだと呼び掛けた。【佐藤貴彦】
松田教授は、日本医療機能評価機構の医療政策勉強会で、「次期医療計画・介護保険事業計画を見据えた病院医療」をテーマに講演した。
■団塊世代は「大きな波」、対策は地域ごと
地域医療構想は都道府県が策定する「医療計画」の一部で、25年時点で必要な医療機能ごとの病床数や、在宅医療などで追加的に対応すべき患者数を推計したもの。必要病床数の推計結果が現状の病床数を下回る地域が少なくないが、講演で松田教授は、同構想の目的が病床削減ではないと、改めて強調した。
その上で、25年には医療区分1の入院患者に相当する慢性期の医療ニーズが急増すると指摘。人口ボリュームが大きい団塊世代が75歳以上になるためだと説明した。「大きな波がいきなりやって来る」と問題提起し、そうした慢性期の医療ニーズに対応する方策を早期に考えるべきだと訴えた。
さらに、そうした慢性期の医療ニーズには療養病床での入院医療と介護サービス、在宅医療の3つを組み合わせて対応する必要があり、そのバランスは地域ごとに異なると主張。患者の世帯構成や医療資源などの実情を調べながら、療養病床に配置する看護職員を確保できるかどうかや、介護サービスの提供量を増やす場合の介護保険料の伸びに耐えられるかどうかなどを考え、具体的な対策を検討すべきだと指摘した。
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