団塊世代が75歳以上となる2025年が迫る中、「病院完結型」だった医療提供体制を改め、住民を地域全体で支える「地域完結型」につくり変えるための施策が次々講じられている。診療報酬や介護報酬によるインセンティブもその一つで、入院患者を在宅復帰させるパスの整備が進められてきた。日本介護支援専門員協会の鷲見よしみ会長は、18年度の診療報酬・介護報酬同時改定で求められるのは、整備されたパスを患者が活用するための仕組みづくりだと指摘する。【佐藤貴彦】
病院が果たす入院医療の機能は、時に川の流れに例えられる。「川上」は急性期で、その後、回復期でのリハビリテーションを経て心身機能を取り戻し、「川下」、そして「海」へと流れていく。14年度診療報酬改定は、この流れを明確化させるものだった。急性期から慢性期までの入院医療の評価に、在宅復帰率の要件が盛り込まれたのだ。
同改定に先立ち、この布石とも言える仕組みが、介護報酬に導入されていた。12年度改定での「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」などの新設だ。この加算は、介護老人保健施設(老健)の高い在宅復帰機能を評価するもので、退所後の在宅復帰率30%超といった要件を満たすと算定できる。
同加算を届け出る老健などは、患者を「海」に向けて送る流れに組み込まれた。さらに、16年度診療報酬改定で、在宅復帰機能が高い有床診療所もこの中に加わった。在宅復帰率のノルマを課せられた病院や老健は、患者・利用者をできる限り「川下」へ送る。その流れは今、 図1=クリックで拡大= のように続いている。
■退院に「介護サービス必要」4割
しかし、医学的には在宅復帰できる状態でも、さまざまな事情がそれを阻むケースが少なからずある。厚生労働省が14年、一般病院の入院患者を対象に行った「受療行動調査」では、「退院を許可された場合に、自宅で療養できるか」という問いに対し、25.9%が「できない」と答えた。
さらに、「できない」と答えた人だけに、自宅で療養するために必要なものを複数回答で尋ねたところ、41.8%が「入浴や食事などの介護が受けられるサービス」と回答。この割合は、「医師、看護師などの定期的な訪問」(25.0%)よりも高い。
回答者の要介護度などは定かでないが、患者と介護サービスを結び付けることが、在宅復帰の成否と大きく関係するのは間違いない。
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