【千葉大学医学部附属病院病院長企画室長・病院長補佐・特任教授 井上貴裕】
1.外部環境と病院経営
病院経営において外部環境の影響は極めて大きい。高齢化や人口の増減、所得水準、交通の利便性など、医療機関ではコントロールできない要素が、財務状況に大きな影響を及ぼす。医療機関は地域に根差した存在であるため、当然ともいえるが、都会への一極集中が加速する中で、田舎との差が開きつつあるように感じている。
企業ならば、より有利な条件を求めて新たな地域に出店することも可能だろうが、病院の場合には、立地等を変えることは容易ではなく、戦略的な選択肢も限られる。地方の医療機関が東京駅周辺などに診療所を開設するのは、新規患者開拓の一環だろう。ただ、それができるのは一部の医療機関であり、ほとんどの病院は地域に根差して活動していくことが求められている。
都会と田舎では、スタッフの集めやすさや離職率、患者の意識、競合医療機関数などが異なり、そのことが病院の財務状況に大きく影響する。スタッフの意識向上や前向きな取り組みが大切なのは言うまでもないが、どんなに頑張っても越えられない壁がある。それは外部環境に既定される部分が多い。
本稿では、都会と田舎で病院経営をする上でのメリット、デメリットについて言及し、経営戦略を考える際の素材を提供したい。なお、本稿は都会と田舎という2軸で単純に地域を分けているが、田舎であっても中核病院が乱立する地域もある。「うちは都会の病院と違うから」などと感覚的に決めるより、ハーフィンダール指数などで地域の実情を把握した上で、自院が置かれた立ち位置を考えることが望ましい(連載第4回参照)。
次回配信は2月20日5:00を予定しています
(残り2404字 / 全3121字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】