がんで亡くなる人は年間約37万人。これに対し、緩和ケア病棟入院料を算定するのは、378施設・7695床(2016年11月時点・日本ホスピス緩和ケア協会調べ)となっている。同協会の調査によると、同病棟での死亡者数は2015年度で4万2839人だが、306施設※が対象(回収率93.1%)のため、実際には5万人以上が亡くなっていると考えられる。言い換えれば、少なくとも30万人は緩和ケア病棟以外で亡くなっている。
特集では、がん患者の緩和ケアや看取りはどこが担っていくのかを考えてみたい。【大戸豊】
■地域に一緒に機能担ってほしいと呼び掛け
緩和ケア病棟を増やすよりも、地域で広く緩和ケアを担うべき-。横浜市鶴見区にある平和病院(一般106床、医療療養40床)の髙橋修院長は、緩和ケア病棟で対応できる限界を見据えつつ、外来、地域との連携、急変時のバックアップ体制などを強化してきた。
同院ではもともと緩和ケア科の髙橋院長を中心に、一般病床で緩和ケアを行っていたが、2011年の新病院のオープンに伴い、緩和ケア病棟(16床)を開設した。
緩和ケア病棟の平均在院日数は、14日-15日と急性期病床並みで、入院希望者は多いものの、稼働率は70%台。これには緩和ケア病棟特有の事情がある。
髙橋院長は、緩和ケア病棟の稼働率が常に80%を超える病院は少ないという。看護師の配置は7対1以上でも、がんという疾患を抱えることから、入院の際に説明の時間を十分取る必要があったり、患者が急に亡くなることが多く、すぐに患者を入院させられないことなども関係している。
緩和ケア病棟を開設した当初、他の病院に入院していて、状態が悪くなってから紹介され転院を希望する患者が多かった。病床が少ないこともあり、そのような患者だけを受けていると、必然的に緩和ケア病棟にたどり着けないケースが増えた。
このようなことから、同院では地域に対し、一緒になって緩和ケア機能を担ってほしいと呼び掛けてきた。
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