団塊世代が75歳以上となる2025年には、約700万人が認知症になる見通しだ。同年まで10年を切る中、認知症ケアが18年度の診療報酬改定のキーワードとなるのは間違いない。認知症高齢者の看護に詳しい内田陽子・群馬大大学院教授は、16年度改定でできた「認知症ケア加算」の費用対効果などのエビデンスが示され、身体合併症で入院した認知症患者の在宅復帰などがより促進されれば、日本が世界一の認知症ケア大国になる可能性が十分にあると話す。【佐藤貴彦】
25年を見据えた国の認知症施策は、厚生労働省が15年1月、関係省庁と共に策定した「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を基に進められている。
同プランで実現を目指す医療・介護の提供体制は、認知症の人が、容体の変化に応じて適切な場所でサービスを受けられるものだ =図、クリックで拡大= 。早期診断・早期対応を重視しており、国は速やかな鑑別診断などを担う「認知症疾患医療センター」の整備を、急ピッチで進めている。
同センターは、検査体制などで「基幹型」「地域型」「診療所型」の3タイプに分類され、昨年末時点で計375カ所の病院・診療所が指定を受けていた =表、クリックで拡大= 。これに対し、同プランが掲げる目標は、17年度末時点で約500カ所。その達成に向け、同省は今後、「診療所型」の名称を「連携型」に変え、CTを持たない病院などを指定の対象に加える予定だ。
「診療所型」は、診療所が対象の類型として14年に創設された。しかし、鑑別診断などを評価する特掲診療料の「認知症専門診断管理料」は当初、「基幹型」か「地域型」の病院しか算定できないルールだった。16年度改定でようやく、「診療所型」にも同管理料1の算定が認められたが、「連携型」の病院が同管理料を算定できるかどうかは、今後の中央社会保険医療協議会の議論に委ねられそうだ。
■BPSDの背景にある患者のニーズ探って
新オレンジプランが描く将来像を実現させる上では、認知症と診断された人の身体合併症を治療する体制の整備も欠かせない。このため16年度改定では、急性期病院などでの認知症ケアの質を高める目的で、認知症ケア加算が新設された。同加算が、現場にどのような影響を与えているのか。そして、それを踏まえた18年度改定のポイントは-。内田教授の話を聞いた。【聞き手=佐藤貴彦】
病院に入院する患者さんは、どんどん高齢化しています。また、高齢になるにつれ、認知症のリスクは高まります。もはや、「高齢患者や認知症の患者は診ない」ということは、どの医療機関にも許されない状況です。
しかし医療現場では、心疾患などの主疾患の治療で入院する患者が認知症だと分かると、避けたりする傾向がありました。また、治療を優先させるあまり、認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して薬物療法や、抑制の措置を取らざる得ない状況でしたが、認知症ケア加算の新設により、認知症ケアの質向上が一気に加速する可能性が出てきました。
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