【千葉大学医学部附属病院病院長企画室長・病院長補佐・特任教授 井上貴裕】
1.病棟の混合化をどう考えるか
2016年度診療報酬改定では、7対1入院基本料について「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の項目見直しと基準厳格化が行われた。18年度改定では、さらに厳しくなることが予想される。病床機能報告制度との整合性を図る上で、病棟別に看護必要度が課されるのではないかという声も聞こえてくる。
この点について私自身は否定的で、時期尚早と考えている。1つには、病棟別に7対1を認めれば、10対1や13対1の病院などが「この病棟だけ7対1にしたい」と手をあげ、さらに7対1病院が増加する恐れがあるからだ。10対1から7対1へのグレードアップを阻止できないのだとすれば、病棟別の入院基本料は現段階では現実的な選択肢ではないだろう。とはいえ、報酬改定のたび議論されるテーマなので、どこかで現実味を帯びる可能性も否定できない。
もう1つは(こちらの方が本質的だが)、医療の質が低下する恐れがあるからだ。病棟別になれば、現在7対1を届け出ている多くの病院では、現状のままだと一定程度の病棟を10対1に切り替える必要が生じるだろう。診療科の構成によって、看護必要度の基準を下回る病棟があることはやむを得ない。しかし、切り替えは減収につながるので、皆が病棟の混合化に踏み切ることは間違いない。
混合化すれば、すべての病棟を維持できる病院も多くなると予想されるが、一方で医療の質が低下するというリスクが生じるだろう。特にI・II群のような高機能病院で医療安全面に不安が残る。高度医療を提供する手厚い人員配置の病院ならば、どんな患者でも診療できるというのが大前提と言われればそうかもしれない。しかし、現実はそうではない。
本稿では専門チームが提供する医療の質が高いことをAmerican Heart AssociationのStrokeに掲載された論文(Stroke care units versus general medical wards for acute management of stroke in Japan.「我が国における脳卒中ケアユニットの有効性」)を紹介し、今後の病棟再編に向けての議論の素材を提供したい。なお、本研究は大規模DPCデータを用いた脳卒中ケアユニット入院医療管理料の死亡率に関する有効性を検証した本邦初の研究であり、私の博士学位論文でもある。
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