2016年度の診療報酬改定では、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の基準引き上げなど、急性期のあり方を足元から変えるような施策が行われた。急性期病院は今後どのような機能を担っていくのか、日本病院会の堺常雄会長(聖隷浜松病院総長)とCBnews人気連載の筆者、井上貴裕氏(千葉大学医学部附属病院病院長企画室長・病院長補佐・特任教授)が話し合った。軽度者への対応や大学病院のあり方、病院のアイデンティティー危機など、話題は多岐にわたった。【司会・構成、大戸豊】
-16年度診療報酬改定では、看護必要度の基準引き上げが注目された。
堺 7対1入院基本料の25%の基準はかなり厳しい。聖隷浜松病院(静岡県浜松市)も、26-28%でぎりぎり。改善できそうな要素を洗い出し、対応を進めている。
在院日数の短縮や看護必要度の影響だと思うが、軽度者の救急搬入を受け入れる病院が減っているという印象が強い。
一方で、連携先の慢性期病院の対応も変化している。以前は、「聖隷浜松の患者は重症度が高いから」と敬遠されたりもしたが、「患者をどんどん受けます」と積極的な若い院長も増えた。転院がスムーズだと、急性期病院の看護必要度の改善効果も期待できる。
看護必要度が重視されると、地域の患者の流れも変わる。急性期病院の中でも、重症度が低い患者を中心に受け入れる病院のあり方について、今後議論されるのではないか。
■地域包括ケア病棟、名と実の一致を
-看護必要度の基準引き上げで、地域包括ケア病棟(病床)への転換も増えている。
井上 相当普及しているはずだ。“看護必要度の呪縛”から逃れることができ、約3万円の入院料を最大60日算定できるのは大きい。だが、この状況はいつまでも続かないだろう。
堺 厚生労働省は、病床機能報告を通じて、機能分化を進めていくというが、病床機能と診療報酬をリンクさせていない。地域包括ケア病棟は、病床機能報告の前に始まったものの、いまだに急性期なのか回復期なのか、はっきりしていない。
井上 地域包括ケアシステムと地域包括ケア病棟は、名前はそっくりでも、関連性が見いだせない。地域包括ケア病棟は、実質的に7対1の看護必要度の要件を満たすために転換する病棟という傾向が強く、地域包括ケアシステムとの関係性が見えない。名称と内容に整合性を持たせなければ、国が意図する方向とは別に、運営されていくと思う。
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