「株式会社が特別養護老人ホームの運営に参入できない点は合理性に乏しい」「保険内・外サービスを同時一体提供する混合介護を可能にすべき」。そして、「社福への税制優遇も、場合によって除外を検討すべき」―。9月、こうした政策提言が盛り込まれた報告書が公正取引委員会(公取)から公表された。そしてこの提言は、「規制改革推進会議」の重点テーマに混合介護の実現などを見据えた「介護サービス改革(介護サービスの多様化、担い手の多様化)」が加わるという流れを生み出した。公取が示した衝撃的な提言の内容を改めて振り返りたい。【ただ正芳】
利用者の利益を確保する「競争政策」を促進し、独占禁止法を運用することが公取の役割だ。そうである以上、公取が報告書を出したからといって、介護保険制度がすぐに変わるわけでもなければ、介護報酬が引き下げられるわけでもない。ただ、既に規制改革会議が動き始めていることでも分かるとおり、今回の報告書の内容は将来的な制度設計に影響する可能性も出始めている。
その報告書の正式名称は「介護分野に関する調査報告書」。競争政策の観点から、自治体や株式会社、社会福祉法人などに対して介護実態などの調査を実施した上で、その結果などに基づき、「参入規制の緩和」「介護サービス・価格の弾力化」「補助制度・税制などの見直し」「情報公開・第三者評価の活用」の4項目について、具体的に提言している。
このうち、冒頭でも触れた混合介護の促進は「介護サービス・価格の弾力化」に相当する。報告書の中でも、まずはこの部分から振り返りたい。
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