【株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
■「共創」の時代だからこそ地域貢献の可視化を
これまで医療におけるマーケットシェアの話題は、大抵は競合分析を中心とした「乳がんの患者は○○病院に多く集まっている」といった分析結果から、自院の強み・弱みを把握し、経営改善に生かすような話が多かった。このような考え方は、人口増加・医療需要増大局面では、限られた医療資源を特定領域に集中させ専門特化することで、自院の強みを伸ばす等の戦略につなげることができた。しかし、今後、人口が徐々に減少し始め、医療需要が低減していく環境下では、他病院と競争することがベストではなく、共倒れしないような観点が重要になってくる。
そのような時、従来のマーケットシェアの考え方(本稿では「競争型マーケットシェア」と呼ぶ)はそぐわない。今回は、今後重要性が高まると思われる「地域への貢献度合い」を評価することを目的としたマーケットシェアの考え方(本稿では「共創型マーケットシェア」と呼ぶ)について、具体的な分析手法と分析結果の活用方法を紹介したい。
弊社作成
■マーケットシェアが伸びても見えにくいこと
厚生労働省は毎年度、「DPC導入の影響評価に係る調査『退院患者調査』の結果報告」のデータ(以下、DPC公開データ)をウェブサイトで開示している。急性期病院では、このデータを用いて、自院のマーケットシェアを分析するのが一般的だろう。
DPC公開データでは、診断群分類別や疾患別、手術・処置別の件数が細かく開示されているため、かなり詳細な比較が可能である。また、データ提出病院の増加に伴い、比較できる病院が大幅に増えた。データを提出していない病院や有床診療所との比較ができなかったり、年10症例未満は件数が示されなかったりするなどの制約はあるものの、非常に有益な情報である。
グラフ1 Z地域における肺がん手術件数(輸血等も含む)の推移
厚生労働省中医協 DPC評価分科会資料を参考に作成(グラフ2、3も同様)
ある地域での肺がん手術症例を比較したケースだ=グラフ1=。E病院が件数を大きく伸ばしたりしている。周辺でどの病院が伸びているかを把握することで、例えば、自院が肺がんの領域にさらに注力するため医師を増やしたような場合に、成果が出ているかを判断するのに有益な分析結果である。
次回配信は9月7日5:00を予定しています
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