どんな病院であっても、自然災害から完全に逃れることはできない。ただし、どんな災害に対しても、その被害を最小限に食い止め、できる限り早く復旧・復興するための努力は有効だ。5年前の東日本大震災に勝るとも劣らない巨大災害の発生が予測される中、医療機関の長は、いざという時、どのように行動すべきなのか。そして日々、備えるべきことは何か-。昨年9月、鬼怒川の堤防決壊を伴う「平成27年9月関東・東北豪雨」によって病院の1階と地下が完全に水没する被害を出しながら、一人の犠牲者も出さずに危機を乗り切り、3カ月足らずで完全復旧を成し遂げた水海道さくら病院(茨城県常総市)の理事長・廣井信は、こう語る。「緊急事態に陥った病院の長は、“キャプテン”として患者や職員と向き合い、危機に臨むこと。その姿勢こそが大切ではないでしょうか」。【ただ正芳、敬称略】
「平成27年9月関東・東北豪雨」によって、鬼怒川の堤防が決壊したのは昨年9月10日正午ごろ。ただ、決壊地点から10キロ以上離れていた水海道さくら病院が、すぐに影響を受けることは考えにくかった。実際、午後3時時点で廣井が病院の外に出て、周囲の様子を確認した時には、道路上に5センチか10センチほどの水がたまっていたが、そこから急激に増える様子はなかったという。
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