【鈴鹿医療科学大学薬学部病態・治療学分野臨床薬理学研究室教授 大井一弥(日本老年薬学会理事・事務局長)】
65歳以上の国民医療費は総額の57%を超え、要介護となる患者や生活者も多い。介護者の不足もあり、今後は老老介護の増加なども想定されるだろう。
最近では、国の将来ビジョンとして地域包括ケアシステムの構築が掲げられている。生活上の安心・安全・健康を確保するために医療や介護、予防のみならず福祉サービスまでの生活支援サービスが日頃の生活の場で提供される地域の体制といえる。
薬剤師は調剤のみを行ってきた期間が長いが、これからは、高齢患者が必要としているニーズをつかみ、薬剤師による技術を提供し、安心を与えていくことが必要である。一つには、フィジカルアセスメントといった技術を提供しながら、患者に食い込んでいくことができる。今までの服薬指導では、薬の情報提供が主であったが、高齢化が進み、老化がもたらす症状は非常に多様となっており、薬の情報提供だけでは、ニーズに対応することはできない。背景には、家族の世帯構成が変化し、子どもからの十分な介護が期待できなかったり、近隣の人々とのかかわりが少なくなっている傾向もあるだろう。
(残り1335字 / 全1921字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】