【東京学芸大学人文社会科学系経済学分野准教授 伊藤由希子】
前回は、リウマチ診療支援システム「MiRAi」をベースとした分析システムを導入し、医師にとっての診断・分析が向上したことについて触れた。
第2回は、このシステムが実際どのように患者のためになっているかを見たい。医師にとって診断・分析がいかに容易になったとしても、患者とその情報を共有できなければ、患者に働き掛けができず、治療はうまくいかない。これはどの診療科にも言えることだが、全身に痛みを抱えて外来を受診するリウマチの患者には当てはまるだろう。「できるかぎり簡潔に診断情報を理解したい」、そして「的確に治療したい」というのが患者の願いであろう。
冒頭に述べた「問診票の記入」であるが、実はペーパーレスだ。タッチパネル式パソコン端末を用いて患者自らが問診票画面に入力する。例えば、「腰を曲げ、前にある衣類を拾うことができるか」「水道の蛇口の開閉ができるか」といった具体的な質問項目に、画面をタッチし答えていく。イラストなども工夫されていて、たとえ高齢であったり、機械が苦手でもすぐに慣れるという。
このプロセスには、単に診断時間短縮にとどまらないメリットがある。医師の診察を受ける前に患者が自身の診断履歴を確認し、何がどう悪くなったか、良くなったかを振り返ることができる。これにより、患者が治療に参加し、医師と意思決定を共有する意識が格段に向上したのだ。
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