厚生労働省は12日、国が掲げる一億総活躍社会の実現に向けた同省の考え方を発表した。「介護離職ゼロ」などを目指す「安心につながる社会保障」の実現に向けては、都市部を中心に介護サービスの整備を加速させる方針を明示。2020年代初頭までに、従来の計画より約6万人分上乗せした、約40万人分の在宅サービスや施設サービスを整備するとしている。人材確保策としては、いったん現場を離れた潜在看護師や潜在介護福祉士らの再就職を支援するための準備金の貸し付けを行う案などを示した。【ただ正芳】
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今回、示された考え方には、安倍晋三首相が示した新しい「三本の矢」の実現に向け、厚労省の主な取り組みや数値目標が盛り込まれている。
このうち、第三の矢と位置付けられる「安心につながる社会保障」の実現に向けた基本的なコンセプトとしては、「地域包括ケアシステムの構築に向けて必要となる介護サービスの確保を図るとともに、働く環境改善・家族支援を行うことで、十分に働ける方が家族の介護のために離職せざるを得ない状況を防ぎ、希望する者が働き続けられる社会」を標榜。そのための重点的な取り組みとして、「在宅・施設サービスの整備の充実・加速化」や「介護人材の確保」「介護サービスを活用するための家族の柔軟な働き方の確保」「働く家族らに対する相談・支援の充実」を提示した。
■上乗せ分の対象サービスも提示
このうち、在宅・施設サービスの整備の充実・加速化に向けた具体策として、20年代初頭までに、従来の計画(約34万人分)より約6万人分上乗せした、約40万人分の在宅サービスや施設サービスを整備する目標を掲げた。整備対象となる具体的なサービスとしては、特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設、特定施設、認知症グループホーム、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護が挙げられている。
■都市部の特養、整備促進へ規制緩和
また、都市部など用地確保が難しい地域での施設整備を支援する具体策として、定期借地権の一時金支援拡充や、空き家の活用の促進などを提示。特に都市部の特養については、建物の所有要件や他施設と合築する際の設備共用の規制緩和などの取り組みが必要としている。
■人材確保へ再就職準備金や修学資金の貸し付けも
介護人材の確保については、再就職を目指す潜在看護師や潜在介護福祉士らを対象とした準備金や、介護職を目指す学生の増加・定着支援のための修学資金を貸し付ける案が示された。また、介護者の負担軽減を実現し、離職を防ぐため、介護ロボットの活用方法の検討・開発や見守り支援ロボットなどの導入支援にも力を入れる方針だ。
■11月末に、「介護離職ゼロ」見据えた緊急対策を取りまとめへ
この日開かれた第2回厚労省一億総活躍社会実現本部であいさつした塩崎恭久厚労相は、安倍首相が、特に「介護離職ゼロ」と「希望出生率1.8」の実現に直結する政策について、今月末までに緊急で取りまとめる方針を示したことを説明。同本部に設置した4つのチームに対しても、緊急対策に盛り込むための施策の検討を進めるよう指示した。
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