経営が軌道に乗り、病院全体が活気づいてきた京都医療センターを後にし、2011年4月、藤井信吾氏は北野病院の院長に就任した。センターを黒字化させた実績を買われてのことだった。「期待されて投入されたわけですから、それはプレッシャーでしたよ」と藤井氏は言う。ただ、北野病院は京都医療センターと違い、既に黒字の状態。大きな問題はないように思われた。しかし、実際はさまざまな難題が待ち受けていたという。【坂本朝子】
藤井氏は就任初日、新職員就任式でのあいさつを依頼されたものの、新院長として全職員へのあいさつの予定を事務職員に尋ねると、「ありません」と予想外の返事。嵐の始まりを予感させた。
トップの考えを伝える必要性を強く訴え、急きょ、職員に話をする場が設けられた。そこで、京都医療センターの時のように数値を示しながら、「診療点数を上昇させる必要がある。個室料収入を除いた収益で健全な経営を」と強く語り掛けた。
それからしばらくして、藤井氏はある問題に気付いたという。北野病院では患者数を見る際に根拠にしていた数字が「病床利用率」ではなく、「病床稼働率」だった点だ。
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