日本慢性期医療協会(日慢協)の武久洋三会長は9日の定例記者会見で、財務省が来年4月の介護報酬改定をマイナス改定にすべきと提案している点について、「仮に報酬を6%一律に下げるとしたら、事業所の半分がつぶれてしまうサービスだって出てくる」と述べ、大幅なマイナス改定を目指す動きを強くけん制した。また会見では、疾患別リハビリテーションの廃止などを含む「リハビリ提供体制の抜本改革への提言」を発表。近日中に厚生労働省に提出する方針も示した。【ただ正芳】
介護報酬、9年ぶりマイナス改定を提案―財務省
介護報酬改定、諮問・答申は来年1月中下旬-厚労省、消費税率引き上げ対応も併せて検討
財務省は8日、来年4月に予定される介護報酬改定について、財政制度等審議会財政制度分科会に提案。案では、介護事業の平均収支差率が、一般の中小企業の水準を大幅に上回っている点を問題視し、「介護報酬の基本部分に係る適正化(少なくとも中小企業並みの収支差となる6%程度の適正化)が必要」として、思い切ったマイナス改定が必要と指摘した。さらに特別養護老人ホーム(特養)については、現在実施中の予算執行調査でも、改めて巨額の内部留保の存在が確認されているとした上で、「内部留保が蓄積しない水準まで介護報酬水準を適正化することが必要」などと提案している。 武久会長は、今年4月の診療報酬改定の影響で、医療ニーズの高い人が在宅の介護現場や介護施設に増えるため、各事業所では、新たな人員確保に乗り出すことが予想されると指摘。「そういう段階で、仮に報酬を6%一律に下げるとしたら、多くの介護施設がつぶれる。事業所の半分はつぶれてしまうサービスだってあるだろう」と述べた。 また、医療法人と非課税事業が多い社会福祉法人とでは、内部留保の額が全く違うとした上で、「『特養の内部留保が多いから』ということで、ほかの施設や居宅サービスの報酬まで全部下げたらいいというように、短絡化して言われるのは、非常に心外」とした。 ■疾患別リハの廃止など「提供体制の抜本改革」を発表 9日の会見で武久会長は、日慢協が取りまとめた「リハビリ提供体制の抜本改革への提言」を発表した。提言では、▽出来高から包括への全面転換▽疾患別リハビリの廃止▽算定日数制限の撤廃▽昼間だけでなく、早朝や夜間、深夜にもリハビリが実施できる体制整備▽嚥下障害や膀胱直腸障害に対するリハビリの優先―の実現を求めている。 また、都道府県の地域医療ビジョン策定をサポートするため、厚労省が検討会を設置し、年内の取りまとめを目指している地域医療構想策定ガイドラインについて、武久会長は「(恣意的な地域医療ビジョンをつくろうとするような)知事の横暴を防ぐ、防波堤としての役割を期待している」と述べた。
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