「昔、住んでいた家の近くの山だ。あのころは馬も飼っていて、ほら、そこに小屋がある」。美術館でジョルジュ・ルオーの描くフランスの山を見た女性は、その絵に遠い記憶を重ねるように話し始めた。彼女は認知症を患っている。入居する介護施設の職員は、その熱心な姿と初めて聞く思い出話に驚いた。「この人が、こんなに生き生きと話をするなんて―」。【烏美紀子】
■MoMA発祥、コミュニケーションを生むアート鑑賞
特に力を入れているのが、この認知症プログラムだ。ニューヨーク近代美術館(MoMA)が認知症者のために開発したアート鑑賞プログラムのメソッドを用いており、国立西洋美術館やパナソニック汐留ミュージアムなどの協力を得て2011年から実践している。安心できる雰囲気をつくるため、各回の参加者は、認知症者と介護者のペア4組ほど。アーツアライブ代表の林容子さんを案内役に1時間で4点の絵画を鑑賞しながら、対話型のコミュニケーションを行う。
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