「成功しているところは十指にも満たない」とまでいわれる大学病院での総合診療専門医(総合診療医)の養成。総合診療医を目指す学生からも、なかなか魅力的な研修プログラムが見つからないと嘆く声も出ている。そのような中、地域とうまく連携することで、地域の医師不足を解消しつつ、地域医療を学びたい学生や研修医の需要に応えるプログラムを用意する大学もある。【坂本朝子、大島迪子】
防衛医科大の学生時代から総合診療医を志し、米国のテネシー大で家庭医療を学んだ三重大の竹村洋典教授(大学院医学系研究科家庭医学講座/医学部附属病院総合診療科)は、「総合診療医を大学の中で育てるのは不可能」、そう断言する。
その上で、大学には「卒前教育」と「研究」ができるメリットがあるとし、「大学が核となり、各地域の基幹病院や診療所をフィールドにして、地域医療学講座をつくるなどして人員を配置し、そこで教える。それが一番いいやり方ではないか」と話す。1施設だけで教えるよりも大規模に展開できる上、アカデミックな観点から大学が果たせる役割も大きいからだ。
実際、三重大では、院内にあえて病床を持たず、県内の中核病院や診療所などと連携し、「市中」「郊外」「過疎地」といったさまざまなシチュエーションで地域医療を学べる機会を設けている。連携先には学生や研修医が宿泊できる施設やカンファレンスルームを設置。また、テレビ会議システムを導入し、施設間で指導医を共有できる体制も築いている。
このように、県内の広い地域で協力体制を築けているのは三重大の最大の強みだが、それには三重大医学部が三重県立大から移管されたこともあり、行政の協力が得やすかったという背景もあるという。
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