【八尾市立病院薬剤部長補佐 長谷圭悟】
医薬分業が進み、病院勤務の薬剤師と保険薬局(以下、薬局)勤務の薬剤師の担うべき役割が時代とともに変化してきた。そして、入院患者に退院後も切れ目のない医療を提供するために、薬物療法を管理する病院および薬局の薬剤師が連携を強化する動きが目立ち始め、情報交換会や研修会の実施、お薬手帳、退院時服薬指導書、処方せんへの検査値の印字など、さまざまな取り組みが進んでいる。
そのような中、現在、入院患者が退院した後には、受診時に院外処方せんを受け取り、院外薬局で調剤された医薬品を服用するのが一般的な流れとなっている。しかし、薬局薬剤師は業務上、その患者の医療上の背景(病名、臨床検査値、医師の処方意図など)を正確に把握することは困難と推測されるので、薬局で指導する服薬指導の内容が病院薬剤師と同様に実施されているかには疑問がある。また、薬局と病院の間で情報伝達ツールとして利用されている「お薬手帳」は、記載内容が患者への処方内容の時系列表示となっているため、複数の医療機関を受診している場合などには、患者の薬物療法の全体像を把握するために時間と経験を要する。
これらの現状を打開し、より効果的な薬物療法を実現するためには、保健医療計画にも記載されている「患者情報などの共有化、在宅医療での医療機関と薬局の連携強化」が必要となってくる。つまり、薬局薬剤師が退院後患者の服薬指導を行うに当たり、その患者の入院中の治療について事前に情報を得ることができれば、より効果的な服薬指導を実施でき、患者が安心して退院後の薬物療法を受けることが可能になる。それを実現するために、入院中の治療方針や処方情報を薬局薬剤師が把握できる仕組みが必要になると考えた。
そこで、患者が退院する際に、薬局薬剤師が病院を訪問し、患者の入院中の療養状況について病院薬剤師と共に診療録の閲覧などを通して情報共有を図り、さらに患者のベッドサイドで病院薬剤師と薬局薬剤師が相互に連携し、共同で服薬指導を実施する「中河内薬薬連携モデル事業」を立ち上げた。大阪府中河内地区(八尾市、東大阪市、柏原市)の薬局・公立病院・行政が一体となり、第三者評価機関として大学の参加も得て、患者の薬物療法を向上させるなど、良質な医療の提供を目指すとともに、患者に薬剤師の職能と薬物療法の安全性への貢献度を見える形で提供することを目的として、2009年9月から実施した。
次回の記事配信は、6月19日15:00を予定しています
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