【富永愛(富永愛法律事務所 弁護士、医師)】
今回は、肺血栓塞栓症が発症した場合に損害賠償が認められた具体的な事例を挙げて、肺血栓塞栓症に対する最近の判例の傾向を解説します。
■はじめに
肺血栓塞栓症は、今まで元気だった患者さんに突然発症し、患者や家族にとっては青天のへきれきであることが多いために、医療ミスではないかと考えられやすい背景があります。そのため、今までも幾つかの医療訴訟があり、その判決も多数存在します。従来は、突然発生した肺血栓塞栓症の結果を医師に負わせるのは酷だという判断がされた判決も多くありますが、最近の判例では、予防措置を取っていなかった場合には、責任を問われるものも見られるようになってきました。2004年(平成16年)には肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症予防ガイドラインが公表され、同年4月から保険診療として「肺血栓塞栓症予防管理料」305点が算定されるようになって以来、医療機関は適切に予防することが必要だと言えます。
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