【小島崇宏(北浜法律事務所・外国法共同事業 医師、弁護士)】
頚椎後縦靱帯骨化症により四肢全体に重度の障害があった患者Xに対し、頚椎前方固定術を行ったところ、患者Xは、さらに症状が悪化したとして、医療機関Yに対し、約5906万円の損害賠償請求をしたのが本件です。これに対し、裁判所は、「術後の四肢不全麻痺は、(1)手術機器であるエアトームの振動による脊髄損傷、(2)エアトームによる脊髄の直接損傷、(3)骨片の挿入による脊髄の圧迫損傷のいずれかである可能性が高い」とした上で、「そのいずれかを特定することは困難である」としながらも、「いずれにせよ、上記(1)ないし(3)の原因のいずれか、あるいはこれが複合して脊髄の損傷をきたしたものと認めるのが相当である」とし、医師の過失を認定した上で、約2059万円の損害賠償金の支払いを命じました。本判決は、比較的安易に、過失を特定せずに概括的に認定している点など、疑問の残る判例ですが、こういった裁判所の判断にも耐えうる様な対策が必要です。
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