京大医学部附属病院の放射線科で、医員として臨床と研究に携わることになったわたしは、前回述べたセクレチン(膵外分泌刺激ホルモン)を手始めに、モチリン(消化管ペプチド)、VIP(血管作動性腸管ペプチド)、GIP(胃酸分泌抑制ペプチド)など、次々と発見されるホルモンの微量測定系を確立させていきます。
そして、これらのホルモンについて、さまざまな食事条件の中で、血中動態や疾患別の血中値を測定。その一つの集大成として、日本核医学会のシンポジウムで発表します。しかし、残念なことに、血中動態に明らかな疾病との相関性までを見いだすことはできず、それが大きな心残りとなりました。
当時、それらの消化管ホルモン群は、「脳-腸ホルモン」と呼ばれていました。従来の内分泌学では、細胞からホルモンが全身に分泌され、血流に乗って標的細胞に到達し、作用が発現するのが一般的でしたが、それらの消化管ホルモン群は、神経伝達物質のように、分泌された場所で作用を発揮するものが多かったのです。今、振り返ってみると、研究の成果が出なかったのは、そのことも関係していたのかもしれません。
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