【川越胃腸病院 総務部長・医療サービス対応事務局長 小川卓】
4回目は、「D」のデプロイメント(Deployment)です。
「インターネットサービスを利用可能な状態にする」というIT用語から、ここでは周囲との「つながるしくみを用意する」という意味で考えていきます。
私たちの周囲には、一緒に働いている人、これから働きたい人、診察を受けている人、近所に住んでいる人・・・等々、いろいろな立場の人とのかかわりやつながりがあります。
どちらの職場でも、いろいろな「つながるしくみ」を工夫されていると思いますが、ここでは全体のテーマである「ひと輝く好循環」にフォーカスしながら、当院の実践をご紹介していきます。
当院は職員採用面接に特別のこだわりを持っています。その様子を望月智行院長の著書「いのち輝くホスピタリティ」(文屋)からご紹介します。
「・・・私たちは採用面接を、理想の病院づくりに欠かせない中核的な仕事の一つとして、非常に重視するようになりました。
最初の面接では、病院の理念をはじめ、医療に対する考え方や病院づくりの基本的な考え方を徹底的に伝えます。どんなに忙しいときでも、十分な時間をかけて、ときには相手の方が『もうけっこうです』と言いたくなるほど想いを伝え続けます。
2回目の面接でも、私は病院の考え方を、さらに深く語ります。それから、必ずこうつけ加えます。『面接というのは、私たちがあなたを一方的に判断しているのではありません。あなたも病院を厳しい目で評価してみてください。職場は人生の大切な時間を過ごすところであり、成長を託すところでもあります。ですから自分の人生をゆだねるだけの価値がある病院かどうかを、あなたの目でしっかりと見きわめてください』と。こうしたやりとりを重ねながら、その人がどういう夢を追っているのか、どんなことを生きる目標にしているのかを探っていきます。病院の目標とその人の目標に重なる部分が多いほど、病院にとって望ましい人材ということになります。・・・」
いかがでしょうか?組織のトップである院長自身が、どんなに忙しくても、時間をかけて当院の理念や目指している姿を語ることからスタートするのが当院の採用面接です。
今、この文章をお読みいただいている方(ありがとうございます)の中には、私どものような中小規模医療機関にお勤めの方もいらっしゃると思いますが、日々の診療とさまざまな業務に追われ、採用面接は資格と身元がしっかりしていて、それなりにまじめに働いてくれそうだと判断すれば、あとは勤務条件や給与を提示して終わり、というパターンも多いのではないでしょうか。
青臭いことを言うようですが、そんな採用の適否を決めるためだけの面接で本当にいいのでしょうか?その時間は面接の場で向かい合う双方にとって「ひと輝く」体験となっているでしょうか。
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