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■機器オーダーの手間を軽減
フィリップス・ジャパン(東京都港区)は「Philips Care Portal(フィリップス・ケア・ポータル、PCP)」を提供する。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療にまつわる検査、治療からフォローアップまでの一連の流れを一つのシステムで完結。治療や検査に必要な機器を患者の自宅に送付し、そこからPCPにさまざまなデータを集約する。
PCPを導入した医療機関は、まず医師が睡眠検査をオーダーすると、フィリップスから患者の自宅に検査機器が直送される。患者は機器受け取りのために来院することなく、自宅で睡眠時検査を行うことができる。検査結果レポートは、医療機関がシステムからダウンロードし、検査実施後にタイムラグなく結果を知ることができる。
また、治療機器である持続陽圧呼吸療法(CPAP)機器も、システム上で処方・オーダーでき、検査機器と同様に患者の自宅に直送される。検査を受けた後、早期に治療を開始できる。加温加湿器の追加やマスクの変更なども、全てシステム上で行え、次回の来院まで患者を待たせることもない。
従来、SASの検査や治療機器の処方は、医療機関が電話やFAXなどを用いてフィリップスに依頼していた。依頼時に医療機関が作成する指示書の管理が煩雑なだけでなく、手書きによる情報間違いや情報漏えいのリスクなども抱えていた。こういった作業を全てシステム上で入力・管理することで、医療機関のワークフロー軽減だけでなく、セキュリティー対策や患者の負担軽減になるとも考え、PCPを開発した。フィリップスが提供するオンライン診療システム「eHomeCare(イーホームケア)」や、遠隔モニタリングシステム「ケア オーケストレーター」と連携して使用することで、検査・診断から治療開始後のフォローアップまでSAS診療をスムーズに行うことができる。
第1弾として2022年にSAS検査のオーダーと検査機器の直送、検査結果解析、レポートの提供といった、検査に関する項目を開発・リリースした。24年には治療機器であるCPAP機器のオーダー・直送に関する機能を第2弾として追加リリースした。これにより、検査を実施した患者の情報が、そのままCPAP機器使用開始時にも連携され、患者情報を再度入力するなどの手間が軽減されたという。現在はクリニック・病院を含め約1,000施設で導入されている。まずはSAS診療市場で最も伸びているクリニック領域で、PCPは導入が先行しているが、大学病院や総合病院でも導入・運用を進めている。
■循環器系機器も取り扱い
24年に開院した中央林間ハートクリニック(神奈川県大和市)では、SAS診療のため、開院時からPCPを利用している。検査機器のオーダー、患者への機器直送、結果解析だけでなく、CPAP機器の発送オーダーも全てPCPで行っている。
検査機器に関しては、システム上で申し込みをすると、最短出荷日が分かるため、すぐに検査日が確定できる。検査機器の送付・解析状況のステータスもシステム上で確認が可能。PCPから解析レポートをダウンロードできる機能を活用して、解析データを直接電子カルテシステムに取り込んで確認をしている。電子カルテシステムでは採血結果のデータなども取り込め、患者情報の一元管理ができる仕組みを構築している。患者へのCPAP機器の使用状況レポートの提供もPDFでやりとりし、ペーパーレスでの運用を確立している。
また、中央林間ハートクリニックは循環器内科なので、必要な患者にはホルター心電計による検査を実施することもある。フィリップスで提供している、在宅で使用可能なホルター心電計は、PCP上でオーダーが可能で、検査が必要な患者にはSASの検査機器と同様に直送し検査を実施している。
PCPはインターネットを利用したクラウドサービスとなっている。サイバー攻撃や情報漏えいリスクなどへの対処として、3省2ガイドラインへの準拠に加え、オペレーションセンターによる監視・防御を常時行っている。不測の事態に備え、問題を未然に防ぐ仕組み作りを行っている。
医療機関によっては、昔ながらの紙による運用、FAXや電話によるコミュニケーションに慣れていて、デジタル化やPCの操作に難色を示すケースもある。また、サービス利用の際には疑問や問題が発生することもある。その対応のためにもフィリップスは全国に48支店・約500人の営業人員を要しており、医療機関で何らかの問題が発生した場合は、最寄りの担当社員が医療機関の疑問・問題の解決に当たるために、即時に対応する。
フィリップスでは30年までに世界25億人の生活改善を目標に掲げている。同社では、日本人が抱えている大きな問題の一つが睡眠であり、睡眠にまつわる問題の一つにSASがあると捉えている。SASの治療は、日中の眠気や倦怠感の改善などによって、生活の質(QOL)を上げることと同時に、業務中の安全対策の向上にもつながることから、治療に役立つシステム開発に取り組んだ。
PCPにより検査・治療からフォローアップまで一つのシステムで完結できるようにすることで、まずは医療機関の診療のハードルを下げ、治療を受けるべき人が治療を受けられる環境作りに寄与することを目指す。作業や情報を1カ所に集約させることによって医療機関の業務負担を軽減し、患者と向き合う時間を創出することで、きめ細やかなフォローにつながることも期待できる。
▽株式会社フィリップス・ジャパン「Philips Care Portal」
https://www.philips.co.jp/healthcare/resources/landing/philips-care-portal