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■問診内容などをブラウザで利用
TXP Medical(東京都千代田区)はスマートフォン向け患者支援プラットフォーム「ありがとうサポート」を提供している。問診内容の電子化だけではなく、患者・ケアギバー(利用者)と医療機関の情報連携をサポートし、利用者が全人的なサービスを受けられる環境を実現する。問診入力や日誌に加え、情報掲載といった機能により、簡単で便利な情報ツールになっている。
「ありがとうサポート」は、がん治療認定医であり、婦人科腫瘍を10年以上経験した医師がプロダクトマネジャーを務める。利用者と医療従事者のコミュニケーションギャップを埋めることを目標としている。特定の利用者や治療に限らず、一般的に活用できるサービスとなっており、病院DXと利便性・診療の質向上という双方向の視点でサービスを設計している。
特徴としては、ブラウザ上で使用できるため、アプリのインストールが不要となっている。高齢者やデジタルツールに慣れていない利用者でも簡単に使用できる。
操作画面のユーザーインターフェース(UI)は、問診UIとチャットUIの切り替えができる。問診UIはボタンを大きくし、高齢者や手元が不自由な利用者に配慮している。チャットUIは、縦に長くなることから、過去の回答結果をさかのぼりにくかったり、修正しにくかったりというデメリットがあるため、進捗バーから簡単にさかのぼれるよう設計されている。問診UIとチャットUIは、簡単に切り替えられる。またパンフレットや院内掲示ポスターなどを電子化し、持ち運びや検索を容易にしている。
拡張性も高く、ePRO(電子的な患者報告アウトカム)として観察研究に用いることができる。新たなエビデンスの創出を支援するとともに、EDC(電子的な臨床データ収集)などのデータベースに情報を転記することで、医師や研究者の負担軽減を図ることも可能となっている。
公益財団法人がん研究会有明病院(東京都江東区)では、紙で運用されていた問診を電子化することで、利用者の負担軽減と診療時間の効率化を目指し「ありがとうサポート」を導入した。特に、外来化学療法患者の抗がん剤投与日に紙で収集していた問診内容をデジタル化することで、記録の自動化やデータ活用の利便性向上に取り組んでいる。
さらに具体的な効果として、利用者にとって大きなメリットの一つは、電子化することで自身の状態を日々の記録として管理することができ、過去の問診結果との比較が容易になったことである。また、同じ問診については統計値によるほかの利用者との結果比較も可能であり、自分の状態を客観的に把握する手助けとなる。
問診結果は、二次元コードで出力することも可能である。セルフレジの要領で利用者がバーコードリーダーにかざして読み取ることによって、問診結果が自動的にカルテへ送信されるため、問診結果を医師のカルテへ転記する負担がゼロになる。さらに、事前に処方希望薬の情報を確認できることで診療時間の効率化が図られている。
情報機能に関しても、紙で運用していたセルフケアハンドブックを電子化した。これにより、利用者への情報提供を効率化。さらに外来運用の紹介動画などへのリンクも掲載し、利用者が自分のペースで理解できる環境を整備した。利用者にとっては紙資料の持ち運びが不要になり、利便性が向上した。また、電子資料にタグ付けを行うことで、情報を迅速に検索できる。
利用者の支持療法情報へのアクセスも容易になり、医師にとっては患者コミュニケーションがスムーズになった。紙運用からデジタル化され、院内業務の効率化にも寄与しているという。
「ありがとうサポート」は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラムの一環として開発された。問診情報を可視化し、院内の情報と統合することによって診療の質を高める。
■医師と患者の相互理解を促進
プロジェクトの一環で行われた、がん患者とその家族を対象としたアンケートでは、66%が「診療時間に自分の意思を思うように伝えられなかった経験がある」と回答した。その理由としては、「医師が聞いてくれなかった」「診療時間が短い」「診療室で言い忘れてしまった」という声が挙がり、医師と患者にコミュニケーションギャップがあることが明らかになった。この問題を解決するために、「ありがとうサポート」が開発された。特に情報を理解するのに苦労している高齢者など、あらゆる世代や利用者に配慮したデジタルツールを設計し、利用者の意思の言語化を支援する。
「ありがとうサポート」の名前には、患者やその家族が病気に直面する中で、困難を抱えながらも、新たに気づく感謝の機会をサポートしたいという思いが込められている。
導入初期はTXP Medicalの医療従事者が、医療機関ごとのニーズを丁寧にヒアリングする。単なる紙の問診の電子化だけでなく、現場の動線やその後の利活用などを見据えた提案をする。導入前には、デモ環境で検証することも可能となっている。導入時には現場やオンラインでトレーニングを行う。
導入費用は原則無料で、情報掲載機能や連絡機能などのオプションも原則無料で導入できる。ユーザーからの問い合わせを24時間365日受け付け、翌営業日には初期対応を行う。追加の問診カスタマイズ依頼も発注書ベースで簡単に行える。さらに生成AIを利用した問診も開発可能となっている。
TXP Medicalでは導入後、各段階での細やかな対応と最新技術の導入により、医療機関の業務効率化と患者サービス向上への貢献を目指す。
▽TXP Medical株式会社「ありがとうサポート」
https://service.arigatou-support.jp/