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MRI・CT機器の有効活用へマッチング
株式会社ユカリア「スマート脳ドック」

2025年01月31日 12:00

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■機器の稼働率向上

 ユカリア(東京都千代田区)は、医療機関と脳ドック利用者をマッチングする「スマート脳ドック」サービスを提供し、2024年10月現在で医療機関234施設が利用している。受診者は累計で14万7,000人を超えており、約8割は脳ドックを初めて受診している。

 「スマート脳ドック」は、MRIやCTの稼働を増やしたい医療機関と、脳血管疾患やがんを早期に発見したい検診・人間ドック利用者のマッチングサイト「スマートドック」の主要サービスだ。

 「スマート脳ドック」の仕組みは、受診希望者がスマートフォンやPCから「スマートドック」サイト上で受診したい医療機関、検査メニュー、日時を選択し、事前に問診票にも回答する。検査当日は受け付けから完了まで30分の滞在時間で済み、結果は1週間以内にマイページで確認できる。

 読影は放射線科専門医と脳神経外科専門医の2人でダブルチェックする。遠隔で読影可能な体制を構築しており、脳外科医がいない医療機関でも受診できる。医療機関側は専用管理ページに検査メニューと日時を登録し、検査を実施。撮影データはクラウド上にアップロードした後に、提携医が画像の確認をする。読影終了後の結果は、医療機関の確認を経て、受診者のマイページに反映される。「スマートドック」の導入に当たり、医療機関に初期費用やランニングコストは発生しない。脳ドック1回分の受診料は2万2,500円(税別)。検査時間や受け付け時の無駄を徹底的になくし、検査を継続しやすい価格に設定した。導入した医療機関からは、「機器の稼働率が向上した」との評価の声が聞かれる。

■機器のシェアリング

 医療法人平和会平和病院(横浜市鶴見区)では、「スマート脳ドック」の導入がMRIの稼働率向上に貢献し、収益アップにつながったほか、同院を利用したことのなかった人のニーズも掘り起こし、認知度の向上にもつながっているという。




 同院では保有する医療機器の稼働率向上が課題となっていた。MRIはほかの機器と比較して稼働率は悪くなかったものの、脊椎外科(横浜脊椎脊髄病センター)の外来がない日は未稼働枠が発生し、曜日や時間帯によって稼働に偏りがあった。「スマート脳ドック」を導入したのは21年9月。翌10月には予約が入り始め、公開していた枠の3-4割が予約で埋まった。同年12月には用意した枠の多くが予約で埋まり、MRIの稼働率が期待通り向上したという。

 データを分析すると、「スマート脳ドック」受診者の多くは、同院をそれまで利用したことがなく、従来の患者より若いことも分かった。健康を気にしながらも、仕事などにより多忙で脳ドックを受けていなかった層が同システムの導入で顕在化し、受診につながったと考えられるという。同院では受診者のデータを把握することにより、一層のサービス向上につなげられると期待している。

 医療法人ユーカリ武蔵野総合病院(埼玉県川越市)では、休止していた一般向け脳ドックの再開に当たり、「スマート脳ドック」を採用。同システムが病院の収益向上につながるだけでなく、運営上の業務が従来の脳ドックと比べて少なく、導入が進めやすかったことから採用したという。

 同院では、脳外科の常勤医が減少して、画像の確認まで手が回らなくなったことをきっかけに、一般向けの脳ドックを休止していた。しかし、病院の収益を上げる必要性があり、放射線科が中心となって脳ドックを再開する道を探っていた。

 「スマート脳ドック」は、外部の医師が検査画像の確認を行う、検査結果の郵送の手間がいらないなど、病院が運営する従来の脳ドックと比べて、運用の工数が少ないのが利点。さらに関連部門との調整が少なく、導入を進めやすい仕組みが決め手のひとつとなった。

 「スマートドック」は、シェアリングエコノミーの考え方に基づいたサービスとなっている。シェアリングエコノミーは個人や企業が持つ余剰な資源やスキルを、インターネットを通じて共有する経済活動。「スマートドック」により、病院によるMRIやCTの柔軟な有効活用につなげている。

 ユカリアが同システムを検討したきっかけは、2010年代に相次いで報道された、バスの運転手が仕事中に脳血管疾患を発症し、それが原因で事故が発生したニュースだったという。脳血管疾患は、自覚症状が乏しく、早期発見と予防に脳ドックの受診が有効だ。しかし健康診断と違い受診義務はなく、受診料も4万-5万円と高額となっている。

 MRIを導入している医療機関は多く、採算を確保するため機器の稼働を高める努力が求められている。一方で運用の現場では、限られたスタッフで脳ドックを行っているケースが少なくないという。ユカリアでは医療機関へのヒアリングも行ったが、「受診者獲得のための広報や営業活動まで力を入れることが難しい」「結果の郵送などの事務的作業も発生し、その処理にも時間がかかる」といった課題が浮かび上がってきた。




 「脳ドックに対する受診者のニーズと医療機関の課題をうまく当てはめ、両者を結び付けられないだろうか」と考えた時にヒントになったのが、シェアリングエコノミーだったという。ユカリアでは脳ドックサービスへの大きな反響を受け、ほかにもがん検査や胸部CT肺ドックなど対象メニューを拡大している。今後、多様なニーズに応え、同サービスを提供する医療機関を積極的に拡大する考えだ。


▽株式会社ユカリア「スマート脳ドック」
https://smartdock.jp/

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