【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年7月26日、国立大学病院長会議は23年度の決算状況について緊急記者会見を行った。国立大学が法人化されたのは2004年4月で、23年度は初の赤字決算に。経常損益がマイナス60億円となり、大学病院として事業継続の危機にある。附属病院収益は184億円増加し、前年度比5.2%増であるが、診療経費が573億円の6.4%増の見込みだという。高額で使用量が多いオプジーボ及びキイトルーダは2年間で108億円増え、3,000万円を超える再生医療等製品であるキムリア、イエスカルタは2年間で51億円増えている。これに加えて水道光熱費が約1.5倍になり42の本院のうち22病院が経常損益でマイナスに転じている。建物・医療機器の老朽化は急激に進むが、投資ができない環境にある。24年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等で処遇改善は進み、さらに人事院勧告でも国家公務員の給与が2.76%増と前年の上昇率の約3倍となり収支改善にはつながらないことが予想される。「黒字の病院も20あるだろう」と言われるかもしれないが、そこは再開発がこれからであり、特に物価高騰のあおりを受け、そもそも投資ができないかもしれない。仮に投資をしてもその後、高額の減価償却費を負担することとなり、資金繰りにも窮してしまうかもしれない。
医療経済実態調査を用いて特定機能病院の損益差額について国公立と私立に分けた推移を見ると(グラフ1)、いずれも19年度以降大幅に悪化しているが、新型コロナウイルス感染症に係る病床確保料のおかげで純損益差額はプラスを維持してきた=グラフ2=。
材料費比率が大幅に上昇している一方で、
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