【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
生産年齢人口の減少に歯止めがかからない日本では、全産業で労働力不足が深刻化する。こうした社会情勢を冷静に見つめた場合、介護事業においても必要な人材数を確保することは困難と言わざるを得ない。そのため、2042年ごろまで増え続ける要介護者が介護難民とならない対策として、介護DXに取り組んで生産性を向上させていかなければならない。
ところが、介護報酬改定・基準改正のたびに行う必要がある会議や委員会(以下、会議等)が増えている。それが介護分野での生産性向上を進める上で足かせになるのではないかと懸念している。
例えば今年度に新設された「認知症チームケア推進加算」の算定では、対象者1人につき月1回以上の定期的なカンファレンスの開催が必要となる。BPSD(認知症の行動・心理症状)の改善を目的として統一した対応を心掛けるために話し合いを行う重要性は分かるが、そのためにカンファレンスを毎月繰り返す必要があるのだろうか。
そもそも、この加算は複数人の介護職員から成るBPSDに対応するチームを組んでいることを要件にしている。各フロアでそのような少人数のチームが責任を持って対応しているのだ。そうであればBPSD対応のモニタリングなどはカンファレンスではなく、通常業務の連絡という形で十分に共通認識をもって対応できるだろう。従ってカンファレンスという形の話し合いは半年程度ごとのタイミングで行うだけで十分ではないのか。何よりも重要なのは、介護スタッフが介護の場にできるだけ張り付いて利用者との対話を含めた対応時間を取ることではないのだろうか。
そのほかにも、今年度から会議等要件は大幅に増えている。
居宅療養管理指導と福祉用具販売を除く全てのサービスに新設された「高齢者虐待防止措置未実施減算」が適用されないためには、高齢者虐待防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催しなければならない。(※頻度は指定されていないため、年度ごとに1回以上の実施で可と解釈されている)
施設サービスに適用されていた「身体拘束廃止未実施減算」は、短期入所と多機能系サービスにも適用範囲が拡大された上で、これまで省令に身体拘束などの適正化対応の基準がなかった訪問・通所サービス・福祉用具貸与・販売・居宅介護支援に関する省令が改正されて適正化が求められ、これらの全サービスで身体拘束などの適正化を検討する委員会を3カ月に1回以上開催することが義務付けられた。
短期入所や多機能系サービス・居住系サービス・介護保険施設の基準改正では、3年の経過措置期間を設けた上で、生産性向上委員会の設置が義務化されたが、この委員会は定期的に開催することが必要で、各事業所の状況を踏まえて適切な開催頻度を決めることが望ましいとされている。しかし、生産性向上委員会を開催するのだから、同時に「生産性向上推進体制加算」を算定するのが合理的である。するとその場合、生産性向上委員会は3カ月に1回以上開催しなければならない。
施設サービスに新設された「協力医療機関連携加算」を算定しようとすれば、基本原則として医療機関との会議を毎月行う必要がある。
このほかにも、従前から定期開催が求められている身体拘束廃止委員会・褥瘡予防委員会・リスク管理委員会・感染予防対策委員会などの会議等が目白押しである。
■会議等に参加する時間が長くなればどうなるか
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