【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
厚生労働省老健局の間隆一郎局長が3月10日、日本介護経営学会のシンポジウムで「ケアマネジャーのみなさんはシャドーワークが非常に多い」と指摘し、ボランティア的な業務が行われていることを問題視する発言を行った。「例えば、スーパーで買物をしてきてくれと当たり前のように言われる。もちろんその方(高齢者)にとっては必要で意味のあることだが、それはケアマネジャーがシャドーワークで、無償で行う話なのかどうか、整理していかなければいけない」という内容だ。
以前から私は、ケアマネジャーに役割だけ求めて対価を発生させないことは、介護支援専門員を社会の底辺の資格に貶めるものであると指摘し続けてきた。この考え方と、今回の局長の発言内容はかなり近いと言える。しかも老健局長という立場の人が公の場で、「シャドーワーク」という言葉で問題提起したことは非常に意義があり、私の意見の何十倍も重みがある。
そういう意味では、「局長よ、よくぞ言ってくれた!!」とエールと拍手を送りたい。だが同時に、ケアマネジャーのシャドーワークが増えてきた元凶は厚労省にもあるということも指摘しておきたい。
例えば適切なケアマネジメント手法の策定・普及推進(2016年からの10カ年計画)として、来年度からケアマネジャーの法定研修カリキュラムが変更されるが、その目的は、「幅広い視点で生活全体を捉え、生活の将来予測や各職種の視点・知見に基づいた根拠のある支援の組み立てを行うことが介護支援専門員に求められていることを踏まえ、そのような社会的要請に対応できる知識や技術を修得できるように科目の構成を見直す」とされている。そこではヤングケアラーへの支援や、介護離職の対応などの役割をケアマネジャーに求めているが、その対応への対価が発生する方策を考えていないことが問題なのである。
■問題提起で終わってはいけない
24年度の居宅介護支援費の改正でも特定事業所加算の全ての区分に、ヤングケアラーへの支援をはじめ、障害者・生活困窮者・難病患者ら高齢者以外の対象者支援の知識を得る研修などへの参加を要件に組み込んでいるが、加算の算定額がわずかに上がっただけで、増大する役割にふさわしい対価とは言えない。
この状態は対人援助のプロに対する最も失礼な役割の付与と言っても過言ではない。こうした改正の考え方こそ、介護支援専門員のシャドーワークがそこかしこにつくり出されている元凶ではないのか-。これを変えないで、学会で問題点だけ指摘してどうするのだと言いたい。
ケアマネジャーの誕生によって、
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