外国人技能実習制度の見直しに向けて政府の有識者会議がまとめた最終報告書のたたき台の方向性に、介護関係者が危機感を強めている。技能実習生がこれまで原則できなかった「転籍」が、同じ企業での就労が1年以上、同一分野に限るなどの要件を満たせば認められることが盛り込まれたからだ。特別養護老人ホーム(特養)を中心に多くの実習生を受け入れてきた介護業界では、短期間で転籍するケースを想定して受け入れに慎重になる事業所が増えるのではないかという懸念の声も上がっている。今後の制度見直しが、技能実習生と特定技能、合わせて3万6,000人超の外国人介護人材の動向を左右しそうだ。
技能実習制度については、人材育成を通じた国際貢献を制度目的としながらも、深刻な人手不足を背景に技能実習生が労働力として貢献している実態がある。このため、国際貢献のみを掲げたままで労働者として受け入れを続けることは望ましくないとして実態に即した制度に見直す方向で議論が進められている。18日に示された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告書たたき台では、▽現行の技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新制度を創設▽基本的に3年の育成期間で特定技能1号の水準に育成▽特定技能制度は適正化を図った上で現行制度を存続▽受け入れ対象分野は特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定-などを盛り込んだが、この中で特に介護分野に影響があると考えられるのが「人材確保と人材育成」だ。
介護業界では現在、外国人材の受け入れの仕組みとして、EPA(経済連携協定)、在留資格「介護」、技能実習、特定技能1号の4つが設けられている。足元のデータでは、EPA介護福祉士・候補者の在留者数は約3,000人。在留資格「介護」は約6,000人、技能実習は約1万5,000人、特定技能は約2万1,000人。これらの介護人材が新制度の影響を多かれ少なかれ受けることになる。
有識者会議では、主に技能実習と特定技能に焦点を絞り、議論を重ねてきた。技能実習は「本国への技能移転」を趣旨として開始された制度で、介護施設などの下で一定期間に限り受け入れ、OJTを通じて技能を持ち帰るというもの。一方、特定技能は人手不足への対応として、一定の専門性や技能を持つ即戦力となる外国人を介護や建設など12分野に限り受け入れている制度。
介護分野の技能実習生は、第2号技能実習を修了するか介護技能評価試験などに合格すれば、特定技能に移行することができるため、介護関係者は議論の行方を見守ってきた。新たな制度の検討に当たっては、
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