2024年度に行われる診療報酬改定を巡り、医療費を抑えたい財務省と、プラス改定を求める医療団体の本格的なさや当てが始まった。財務省側は、病院や診療所の医療費の単価が近年の物価上昇率を上回って増えているとして、「公定価格の適正化」を課題に挙げている。【兼松昭夫】
一方、日本医師会や病院団体はこれに強く反発し、物価の高騰やスタッフの賃上げに対応するには診療報酬の引き上げが不可欠だと主張している。
■財務省、医科診療所に照準
原則2年に1回行われる診療報酬改定の財源を巡る政府内の調整は、これまで翌年度の政府予算案の編成を巡る焦点になってきた。
24年度の改定は、6年に1度の介護報酬などとの同時改定に当たる上に、物価高騰やスタッフの賃上げへの対応を現場が迫られる中で行われる見通しだ。
さらに、少子化対策の財源を確保するため、政府は医療や介護など社会保障費の歳出を24年度に抑制する方針を示唆してきた。医療機関の経営を揺るがしかねない要素が山積みなだけに、医療関係者は早い段階から警戒を強めていた。
「恐らく誰も経験したことのない環境でこれから迎える中で、少子化対策の財源問題が出てきた」。
15の病院団体が参加する日本病院団体協議会の山本修一議長(地域医療機能推進機構理事長)は6月7日、厚生労働省内で開いた記者会見で、24年度の診療報酬改定がインフレ下で行われる異例の改定になるという見通しを示し、物価高騰が収まらないまま医療費が削減されかねないことへの強い危機感を表明していた。
日病協がこの日に公表した緊急声明では、エネルギー価格や物価、賃金などの高騰で医療を取り巻く環境が厳しくなる中、少子化対策の財源を社会保障費の付け替えで捻出することは許容できないと訴えた。
財務省と医療界のさや当ては9月下旬に本格化し始めた。
24年度政府予算案の編成を巡る提言の取りまとめに向けて財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会が27日に開いた会合で、
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