【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■看護必要度の議論に見え隠れする医療費削減の思惑
2024年度診療報酬改定において、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の評価見直しは大きな論点の1つになる想定である。8月の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」での議論は、いち早くCBnewsマネジメントで取り上げていた(看護必要度また見直しへ、24年度に)。
高齢者の救急搬送が増加する中、現場の負担に応じた適切な評価を行うことは、望ましい医療提供体制の整備を促す意味において極めて重要である。また、働き方改革は、これまでの医療従事者の自己犠牲的な労働を前提とした救急医療の受け入れ機能維持に大きな変革を生じさせようとしている。加えて、救急医療の受け入れ体制は地域ごとに大きく異なる。基幹病院が救急搬送などを一手に引き受け、病態に応じて後方病床に連携するケースや、病態などに応じて基幹病院とそれ以外の病院が役割分担しているケース、その両方を組み合わせたケースなど、さまざまなパターンがある。
それゆえ、急性期病院の評価だけを見直せば万事解決することではない。理想は、地域包括ケア病床などの後方病床や在宅医療の機能、介護施設などの多面的な評価の見直しを行い、地域ごとの提供体制パターンに応じて、問題が生じないか検証していくべきだろう。
ただし、改定に向けて議論する時間は限られている。そのため、看護必要度の議論を例に挙げるならば、本質的には、患者の病態・医療の提供内容・医療の質に見合った適切な看護配置がなされているかを検証すべきである。しかし現実は、検証するパターンは終始全国平均的なものだけであり、「急性期一般入院料1の病院の何割が新しい基準を満たせない」などのシミュレーション結果を基に議論することになる。このような近年の議論の進め方は、医療費削減・7対1病床の削減ばかりを考えているとしか思えない。
そのため、働き方改革を進めつつ高齢者の救急搬送増加を受け入れるために十分な配慮が必要な次回の改定でさえも、厳しい「シミュレーション」が出てくるに違いない。今回はその危機感および自院の現状把握の重要性について共有する。 (残り2490字 / 全4086字) 次回配信は9月20日5:00を予定しています
■看護必要度は「横軸を入院経過日数」で見る
8月の「入院・外来医療等の調査・評価分科会」の資料から看護必要度のグラフを引用する=グラフ1=。横軸は入院後日数、縦軸は必要度基準該当割合が設定され、疾患や年齢で分けた6種類の折れ線グラフが記載されている。
入院初日から5日目までの看護必要度が高く、6日目以降は大きく低下している。急性期一般入院料の基準が20-30%前後であることを踏まえると、入院初期の患者でベッドを埋めることの重要性が明確に分かる。また6日目以降の看護必要度を見ると、C項目に該当した患者を除いた折れ線(赤)や、誤嚥性肺炎(紫)、尿路感染症(水色)、圧迫骨折(橙)など入院中に手術をしない患者の割合が高い疾患の折れ線は、全疾患・全年齢(青)や全疾患・75歳以上(緑)より低いことが分かる。
このように入院経過に応じた看護必要度の該当患者の割合推移を見ることにより、その時々の評価制度の特徴や疾患の特徴を理解しやすい。例として以前の拙稿から2つのグラフを紹介する。14年度制度から20年度制度までの改定について、同じ患者データを用いて該当患者割合の変遷を見ることにより、改定のたびに入院初期の評価を上げていったことが分かる=グラフ2=。
また、18年度制度から現行の22年度制度までの変遷を見ると、入院後半の評価が下がったことが分かる=グラフ3=。
なお、この該当患者割合の変遷に加え、入院料ごとのハードルも変化しているため、過去の細かな影響についてはそれぞれの拙稿をお読みいただきたい。
■高齢者救急の受け入れ方向性から看護必要度の改定内容パターンを考える
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