【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■結論、白内障手術「外来移行すべき」だが、「入院で4割実施」の実態をどう考えるか
白内障の手術は外来移行すべきである。次の5つの不安材料をクリアできるのであれば、なおのこと外来移行すべきである。
1. 病床を高回転化しても、新規入院患者が十分おり稼働率低下の心配がない
2. 在宅復帰率など診療報酬上の要件に不安がない
3. 白内障手術の外来実施において、手術前後の患者動線・スタッフ配置などに不安がない
4. 手術当日の来院・帰宅などの患者移動に不安がない
5. 基礎疾患などの病態管理上、外来での実施に不安のある患者がいない
入院でも外来でも実施できる手術・検査に対し外来移行すべきだという当たり前過ぎる主張は、5つの不安材料を気にしない「強者」である病院には通用するだろう。しかし、病床稼働の低下や患者動線の悪さに悩んでいる病院にとっては非常に悩ましい問題である。今回は悩んでいる後者の病院向けの内容であり、強者は対象でない。
診療報酬において「短期滞在手術等(日帰り手術,1泊2日入院による手術及び4泊5日入院による手術及び検査)を行うための環境及び当該手術を行うために必要な術前・術後の管理や定型的な検査,画像診断等を包括的に評価したもの」※とされている短期滞在手術等基本料は、基本料3の4泊5日まで金額が変わらない点に代表されるように、在院日数短縮へのインセンティブが設定されている=資料1=。
短期滞在手術等基本料3の対象の手術や検査には、入院外での実施割合が既に高い手術・検査も多い=資料2=。下肢静脈瘤の硬化療法や小児食物アレルギー負荷検査などのように90%以上が入院外で実施されているものがある一方で、鼠径ヘルニア手術や前立腺針生検などのように入院外での実施が10%に満たないものもある。その中で、白内障の手術(水晶体再建術 眼内レンズを挿入する場合 その他のもの)は入院外での実施が60%程度で、入院・外来どちらも選択されているのが実情である。
■外来機能分化、医療費適正化計画を踏まえた対応を考える
外来機能報告で地域における外来での手術実施状況などが明らかになれば、白内障手術における病院・診療所の役割について機能分担が議論されることも考えられる。また、次期医療費適正化計画で、新たに設定する「医療資源の効果的・効率的な活用、医療資源の投入量に地域差がある医療」の目標の例として、白内障手術の外来実施が挙げられている=資料3=。
白内障の手術は、経済協力開発機構(OECD)加盟国では外来実施割合100%の国が多いのに対し、日本は5割強にとどまっている。また、徳島県のように90%と高い地域がある一方で、福島県は32%と低く、地域により大きくことなることが示されている=資料4=。
■白内障手術の外来実施割合に患者年齢はほぼ関係ない
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次回配信は8月2日5:00を予定しています
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