【元松阪市民病院 総合企画室 世古口務】
前回は、病院新築の際の建築費用の現状について説明しましたが、今回は、公立病院の新築費用がなぜ高額になるのか、考えてみたいと思います。
実際、東日本大震災後の公立病院の新築事例で、1床当たり5,000万円以上の建築費の病院も見られます(参考:公立病院は平均約3,500万円、民間病院は約1,600万円、公的病院は両者の中間)。資料1は各病院のホームページで公表されているものから筆者がまとめたものです。 (残り4230字 / 全4991字) 次回配信は6月9日5:00を予定しています
さらに病院新築の場合、これまでの医療機器を使用することなく、より高機能の最新機器を設置することが多く、その費用としてさらに30億-50億円が必要となる場合もあります。公立病院の場合、新病院を計画した人は数年後には退職してしまい、病院建築に直接関与していなかった職員が病院事業債(国からの借入金)を返済していくことになります。この建築費用の返済のために経営が悪化し、病院存続の危機にもなりかねないこともあり、十分に認識する必要があります。
公立病院の病院建築費用が高額になる理由には、次のようなことが考えられます。
(1)返済計画のない病院新築
民間が病院を新築する場合には、それによって新しく得られる収入と増える支出を考え、病院収益で支払える範囲内で予算を考えます。公立病院の場合には、まずは「病院ありき」になりやすい傾向が見られます。一般に、「病院にお金をかけるほど良い行政」という考え方がいまだに根強いことも問題です。通常、病院の新築には、ほとんどの住民、議員が反対しません。病院スタッフも、立派な建物で仕事をすることを望んでいます。高い病院建築費であっても、予定より収益が低ければ、病院経営が厳しくなることが分かっていても、詳細に分析していないのが現状です。
(2)起債制度と交付税措置
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