「かかりつけ医機能」を巡り、政府内の議論が本格化している。まずは最初にやらなければならないのが、その機能の定義付けで、厚生労働省の検討会でも論点になっている。しかし、厚労省保険局の医療課長として2014年度(平成26年度)の診療報酬改定を担当した宇都宮啓氏(医療法人社団健育会副理事長、慶應義塾大学医学部客員教授)は、「既に明確にしている」と話す。また、財務省が提案する「かかりつけ医」の登録制が仮に日本で導入されれば、医療現場が相当混乱するとも指摘する。【聞き手・松村秀士】
―外来機能の分化を進める厚労省の検討会などで、「『かかりつけ医』を定義すべきだ」との意見が繰り返し出た。厚労省はこれまで、「かかりつけ医」や「かかりつけ医機能」をなぜ定義してこなかったのか。
厚労省としては、明確にしてきたつもりだ。14年度(平成26年度)の診療報酬改定では、「主治医機能」への評価として地域包括診療料(当時は月1回1,503点)と地域包括診療加算(同1回につき20点)を新たに作った。それまでの診療報酬は、医療機関による治療のみを評価していたが、この新たな診療料や加算では、日ごろの健康管理や重症化予防、服薬管理なども含めて対応できる医療機関を評価することにした。具体的には、複数の慢性疾患を持つ患者への対応や、在宅医療の提供、24時間の対応、介護保険施設への適切な紹介、継続的な服薬や健康管理などを算定要件に入れた。
これらの要件を満たすことが「主治医機能」、厚労省の審議会などで議論が本格化している「かかりつけ医機能」を備えているということであり、その機能を要件で明確にしたつもりだ。医政局(医療政策)ではなく保険局(診療報酬)の観点からではあるが、厚労省として「主治医機能とは何か」を少なくとも当時の改定で示したつもりなので、「厚労省が『かかりつけ医機能』を定義してこなかった」「不明確だ」と言われるのは心外だ。
最近の「かかりつけ医」の議論については、
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