【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
適切なケアマネジメント手法について、厚生労働省はこれまでに介護保険最新情報を5回発出している。手法への取り組みは今、始まったものではない。2016年度の老人保健健康増進等事業(老健事業)として始まった。「ニッポン1億総活躍プラン」の一つに位置付けられたこの事業は、当初から10年計画で進められる予定であった。介護保険最新情報が直近に集中して発出されている理由は、22年の今、この手法が10年計画の折り返し地点を迎え、まさに普及・啓発のフェーズに入ったからである。とはいえ、この手法の名称を聞いたことはあっても、中身のことはよく知らないという方のために、今回は適切なケアマネジメント手法の概要と効果を紹介する。
ケアマネジメントは、ケアマネジャーだけが行うものだと思われているが、そうではない。筆者は、関わる全ての者に関連する介護保険制度を貫く手法であると認識している。ケアマネジメントがあればこそ、法人を超えた多職種のケアは統合されて、チームアプローチを可能とする。また利用者の個別性の重視と、全国一律の保険制度という相反する価値さえも、統合可能となる。ケアマネジメントが適切に機能すれば、である。
制度施行以降のケアマネジメントを振り返れば、「利用者本位」の実現に軸を置き、利用者と家族の意向、個別性に重きを置いてアプローチしてきた。ここには重要な価値と成果があったし、今後も一層深めていかなければならないと考えている。一方で、人間には共通する部分もある。ところが、介護やケアマネジメントの領域で人間に共通する部分にスポットライトを当てた科学的な整理、検証はほとんど行われてこなかった。
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