CBnewsマネジメントで160回を超える人気連載「先が見えない時代の戦略的病院経営」を執筆する井上貴裕氏。千葉大医学部附属病院の副病院長を務めるほか、「ちば医経塾」(千葉大履修証明プログラム)の塾長として、病院経営のスペシャリスト養成にも力を注ぐ。井上氏はこのほど、プログラム修了生の遠藤俊輔氏(自治医科大附属さいたま医療センター長)、前田博教氏(高知県立あき総合病院長)と鼎談し、病院長が抱える本音を聞いた。【編集・齋藤栄子】
左から、遠藤氏(自治医科大附属さいたま医療センター・埼玉県さいたま市、628床)、前田氏(高知県立あき総合病院・高知県安芸市、270床)、井上氏。鼎談は2021年12月11日、オンラインで実施
井上(以下、敬称略):病院長就任時の受け止めについて。
遠藤:大学教授だった時に声が掛かり、病院長として約1年半が経った。病院長が何をする者かも分からず、慌てて病院経営の本を探したところ、偶然、井上先生の本に出合ったことがプログラム受講のきっかけだった。当時、診療科長と副病院長も兼務していたが、病院長はまったくの別物だから勉強しなさいと本部から言われたものの、何をすればよいかも分からず、泳げない子がプールの縁にしがみ付くような状態だった。
井上:自治医科大は難しい組織なのでうまく泳がれていると思うし、素晴らしいリーダーシップを発揮されている。
前田:当院は、2012年に2つの県立病院の統廃合により開院した。当時、大学病院で准教授を務めていたところ、病院長の任命を受けた。未経験での病院長就任で大変だったが、振り返って考えてみると、病院の統廃合はあながち悪いことではないと思う。統廃合という一大イベントを乗り越えるため、関係者も力を貸してくれた。
その後、経営は安定路線に乗ったが、コロナ禍で先が見えなくなり目標を見失った。収益を伸ばせていたのにコロナ禍で減少に転じ、コロナ病棟へと姿を変える中で、院内の雰囲気も一変した。これでいいのか、これからどうするんだと悩み、先行きが見えない暗闇に灯台のような存在を求めたのが受講のきっかけだ。
井上:病院長になってからの気付きは。
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