【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
今回は、オンラインを活用した対象者とのコンタクトについて考えてみたい。すでに2024年度介護保険制度改正に向けた政府の準備は始まっているが、これは従前とは異なる改正である。世界規模で、価値観と生活様式の大転換が起きた。24年時点では、その大転換への国民の適応度は相当高くなっているだろう。そうした背景に基づいた改正だ。これまでとは全く異なるフェーズに入ることを認識し、我々の手で未来を見据えて、今できる準備をしていきたい。
22年の幕開けとともに、介護保険法改正の議論が表舞台に出る。23年初頭には、介護報酬改定の議論も始まる。2年にわたる議論は、社会保障審議会の介護保険部会、介護給付費分科会それぞれの会議体で行われるが、確実に連動している。想定される範囲の報酬改定事項は、法改正の議論の時点から、話題にせずとも見据えられている。とはいえ、想定されることばかりではないため、社会や介護現場の変化に応じて、新たに議題として取り入れられていくことを書き添えておく。
24年度改正と、それ以前の改正の相違を認識しておく必要がある。それは、デジタル庁創設後、初の改正という点だ。各省庁は、一層のICT化推進の方策と成果を求められるだろう。例えば、21年度にもICTを活用した改定事項はあったが、どちらかと言えば手探りの中で行われた。現に、21年度当初の現場の状況は、リモートによる会議や研修自体に不慣れで、使用方法の解説やサポートが必要な状況だったことは記憶に新しい。リモート会議への出席一つとっても手間取って、仕事が停滞する状況だった。
リモート環境整備のために、コストも発生した。業務効率化を目指していても、新しいことに適応していくプロセスでは、同じ成果を得るために、より多くの時間を要することもある。つまり、方法やツールを変更すると、いったん効率は下がる。しかし、それが良いものであれば、一定の適応期間を過ぎた時、効率化が進む。実際に、わずか半年余りのうちにリモートの活用は一般化し、移動時間を考慮せず、効率的に会議ができるようになった。
こうした状況を踏まえると、2年後の改正時点におけるICT化は一段と進んでいるだろう。そして、我々の経験知と蓄積された実証検証データから得られた知見を基に、24年度改正が行われることになる。次は手探りではない。労働生産性向上の成果を得る方策が求められるだろう。これに向けた幾つかの実証検証が、すでに現時点で行われている。
次に、医療保険の領域に目を向け、その歩みから介護保険領域に引き寄せて想定できることは何か、考えてみよう。過去の介護保険制度改正を振り返ると、医療保険制度に追随する点は多く、診療報酬改定の動向は常に視野に入れておきたい。
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