【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
岸田文雄首相の掲げる看板政策は、新自由主義的な経済政策から転換し、成長と分配を進め、中間層を拡大していく「新しい資本主義」だ。その中に、「公的価格」を見直し、低く抑えられてきた看護や介護、保育などの現場で働く人の収入を引き上げるというものがある。国が責任を持って看護師・介護職員・保育士らの給与を増額し、それらの「分配」政策で上昇した賃金が消費の増加につながることで経済活性化をもたらし、その結果として生じる税収増などをさらに「分配」して次の成長につなげることを意図した政策である。
このことに関する政府関係者の見解として、給与改善の対象職種や金額について先行報道がされた。具体的には、他の多くの業種と比べて処遇改善が遅れている保育士と介護職員(以下、介護職員らと表記)の全員の収入を、民間に先駆けて月額3%程度に当たる9,000円引き上げるとともに、救急医療を担う病院などに勤務する看護師のみを対象に、当面は月額4,000円の給与改善を行い、幼稚園教諭の賃上げも実施するという内容だ。
看護師の平均給与は全産業平均を上回っているが、医師の給与水準の7割以下であることを理由に給与の改善が検討されていたが、先行報道では救急医療対応の看護師に限定される考え方が示されたほか、看護師・介護職員・保育士ら以外の職種の給与改善は含まない考え方が示されていた。
しかし、政府が19日に閣議決定した新たな経済対策には、「保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための措置を、来年2月から前倒しで実施する」と明記された。ただ、「他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」ことも書き加えた。
これは、閣議決定を前に関係諸団体から全ての職種を対象にした給与改善を求める要望書などが提出されたのを受け、政府が方針転換したものである。
そのため、配分方法の詳細については今後さらに調整を重ねることになり、現時点ではどういう職種に、どの程度の給与の引き上げが実現するかは不透明だ。
■賃上げ財源、来年10月以降も全額国庫負担で対応を
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