【株式会社ジャパンコンサルタント アンド メディカルサービス代表取締役 森清光】
新型コロナウイルス感染症の流行の第5波も、首都圏では医療崩壊に近い状況を引き起こす多大な影響と課題を残し、ようやくピークアウトを迎え、今月末に期限が来る緊急事態宣言は全て解除される見通しとなりつつあります。
国民のワクチン接種も進み、感染者や重症者が減るのではないかとの見方がある一方で、次に第6波が来れば今回よりも感染者が増えるとの意見もあり、首都圏で大量発生した入院難民を今後どのように解消する計画なのかが気掛かりです。
第1波では、国民の多くが未知の疾病に警戒して受診を控えたため、多くの病院が患者数の大幅な減少を経験し、小児科・耳鼻科などが特に大ダメージを受けました。その後も、コロナ前に問題となっていた、「医師の働き方改革」「地域包括ケアシステム」「病床再編」に対応するため、本来であれば多くの病院が中長期の経営戦略を策定し、進めていく時期でしたが、目下の経営対策や院内の感染症対策、部材調達など各部署が繁忙し、コロナ患者受け入れ病院では、医師の働き方改革どころか悪化を余儀なくされています。
過去最多の感染者が出た第5波では、行政からの強い要請により、躊躇していた中小病院もコロナ患者受け入れを余儀なくされ、通常業務縮小や手術の延期などの影響も出ています。コロナ関連の加算・助成金で減収分をどこまで賄うことができるかが焦点となりますが、仮にコロナ禍が終わっても、収益の改善までには時間がかかる、または改善できない可能性もあり、中長期の経営計画策定が非常に難しい状況となっています。
行政サイドは、迅速に進まなかった今回のコロナ禍における医療提供体制を問題視しています。シンクタンクや報道各社が提言や社説を出しており、その中には人口当たりの病床数が世界一にもかかわらず医療崩壊を引き起こしたのは、民間の中小病院が乱立し、マンパワー不足を引き起こしているためだといった記載がされています。国が以前より推し進めている病床再編ともマッチするような内容であり、中小病院の在り方については今まで以上にシビアな対応になるのではないかとみています。
(残り2388字 / 全3303字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】