【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
2021年4月からの介護保険制度の見直しを巡り、議論の過程で利用者負担の増加や給付抑制につながる主な課題の多くが先送りされ、「骨抜き」の状態で法案の成立に至った。そのため、「高額介護サービス費の負担限度額の見直し」が完全に実施されることを除き、幾つもの課題が積み残された。それらは24年度の制度改正に向けて改めて検討され、実現が図られることになる。主な議論で持ち越しになったものは、次の通りだ。
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1.被保険者範囲・受給者範囲の拡大(先送り)
2.「現役並み所得」・「一定以上所得」の基準変更による対象拡大(同)
3.自己負担化されていない老健・介護医療院の多床室の室料負担(同)
4.居宅介護支援費の自己負担導入(同)
5.軽度者に対する生活援助サービスや通所介護等の地域支援事業への移行(同)
6.補足給付の在り方(一部先送り)
7.現金給付(介護者の介護負担そのものが軽減されるわけではなく、介護離職が増加する可能性もあり、慎重に検討)
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一部先送りされるとはいえ、補足給付については資産要件と食費負担額が8月1日から変更されることになり、高額介護サービス費の変更と共に、大きな利用者負担となる。その内容を検証したい。
補足給付に関しては、現行の施設利用者の負担段階の第3段階(世帯全員が市町村民税非課税で、年間所得が80万円以上の対象者)を、所得120万円以下の「第3段階(1)」と120万円超の「第3段階(2)」に細分化した上で、給付の対象となる資産要件(預貯金額)の基準を引き下げるとともに、新設される第3段階(2)の利用者らの食費の自己負担限度額を引き上げるというものだ。
資産要件の変更で、補足給付の対象となる預貯金額の基準が各段階で引き下げられるため、現在は補足給付を支給されていても、8月から支給されなくなる人も出てくる。最初に預貯金の資産要件を設けた際には、低所得者らの反発が起きないように「単身者1,000万円」という高い基準を設定し、それを徐々に引き下げて補足給付を受けられる人を減らしていく-。これが、国の常とう手段だ。24年度の制度改正に向けて、この基準がさらに引き下げられる可能性もある。
厚労省のリーフレットから一部抜粋
■基準の引き上げでトラブルが生じる可能性大
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