【小濱介護経営事務所 代表 小濱道博】
1.次期介護保険法改正に向けた動き
2021年度介護報酬改定も何とか一段落し、そこから解放された。多くの介護事業関係者は、制度のことは忘れて日常業務に集中したい時期である。しかし、国はすでに、次期の制度改正に着手していることをご存じだろうか。改正介護保険法は、20年6月5日に通常国会で成立したが、その内容は、主な論点の大部分は先送りされて、大きな変更のない「骨抜きの改正」というイメージが強い。しかし、それらの論点はなくなったのではなく、3年後の介護保険法改正に持ち越されたにすぎない。
そして早くも財務省の財政制度等審議会の中で、各論点が復活している。財務省は、財政健全化に向けた建議の中で、(1)利用者負担のさらなる見直しやケアマネジメントへの利用者負担の導入など、介護保険給付範囲の見直しを進めることが必要(2)介護サービス事業者の事業報告書等の報告・公表を義務化し、経営状況の「見える化」を実現する必要(3)介護・障害福祉について、利用者のニーズを適切に把握した上で地域の実態を踏まえた事業所の指定が必要-の3点を示している。その内容を見ていこう。
2.居宅介護支援費の見直しの方向性
居宅介護支援費の利用者の自己負担導入などが早々に論点とされている。これに対して、日本介護支援専門員協会は反対する声明を4月30日に出している。それは、自己負担1割化が現実化する可能性が高いことへの危機感だろう。さらに、介護ベッド1台のみを貸与するケアプランなどに対しては、報酬の減額を示したことも要注意だ。ケアプランに位置付けた介護サービスの数によって、報酬を減額する議論も再燃するかもしれない。
3.自己負担原則2割化への動き
利用者の自己負担を原則2割とする論点も健在だ。それは、一気に引き上げるのではなく階段を上るように段階を踏んで、最終的に自己負担2割の実現に持っていく。24年度改正では、利用者全体の20%を占める自己負担2割以上の対象者を、25%に引き上げることが想定される。この点については、医療保険の後期高齢者への自己負担2割化を政府が実現したことから、既定路線とも言える論点だ。
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