4月にスタートした科学的介護情報システム「LIFE」。利用申請に必要なID等が記載されたはがきの発送遅延などからデータ提出の期限に猶予を設けるなど、厚生労働省は対応に追われた。遅延の理由や現在の利用登録状況、課題などについて、LIFEの実務を担当する厚労省老健局の田邉和孝氏に話を聞いた。【齋藤栄子】
田邉和孝氏=厚生労働省老健局老人保健課介護保険データ分析室・地域情報分析支援専門官(医学博士)
LIFEは、介護サービスの利用者の状態等について科学的に分析し、エビデンスを構築するとともに、PDCAサイクルの推進と、介護の質の向上を目的とするシステム。フィードバックされるデータの分析結果を基に、ケアの改善につなげることが狙いだ。厚労省は、通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム「VISIT」と、高齢者の状態・ケア内容等のデータ収集システム「CHASE」を一体化し、この4月からLIFEとして運用を開始した。2021年度介護報酬改定では、LIFEへのデータ提出を加算の算定要件にするなど、報酬上のインセンティブで介護のエビデンス構築を後押しすることも決まった。
具体的にその影響が見えたのは、4月前半からLIFEの利用を始めるためには3月25日までの登録が必要だと厚労省が2月に事務連絡を出してからで、3月にアクセスが集中した。間に合わないと困るのでまずは登録をしておこうという事業所も多かったのだろう。ふたを開けてみると、事業所からの利用登録が短期間に急増した。さらに、LIFEの新規登録は複数サービスを提供する場合も1事業所1回(事業所番号ごとに1回)で構わないが、重複登録されているケースも多数あった。重複を整理した上で、利用開始に必要な情報が記載されたはがきを送付する流れになったことも、遅延の大きな理由になった。
今はシステムを改修して、同一事業所が複数回登録できない仕様に変更したため、重複の場合は「既にこの介護事業所は新規利用申請が完了しています」というアナウンスが表示されるという。
では、実際の登録数は何件になったのか。2月末時点のシステムの登録事業所数は、VISITは796事業所、CHASEは5,585事業所だった。LIFEへ移行してからの重複等を精査した結果、4月末時点の登録事業所数は約6万事業所に上ったという。
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